ボンゴレプロダクション!
ボンゴレプロダクション!5
「社長、私歌えませんもん」
黒髪のかわいらしい容貌の少女は社長の机にばん!と手をたたきつけて深刻そうな顔で社長の顔を見つめた。
「いやいやいやいやいやいや、歌えるから。君ちゃんとした歌手だから」
そうましゅまろ頭…いや白蘭は少女を諭すように訂正を加える。
「君十分歌手だから。ユニちゃんは大人気の可愛い可愛い歌手だから」
「お世辞はやめて下さい。不愉快です」
「えぇっ!褒めてるのに!?」
「賞賛する人は敵とみなします」
「じゃあ世界殆どを敵とみなしてることになるよ!?君今大人気なんだから!賞賛だったらいくらでもされてるからね!?」
「ファンの方は別ですファンの方大好きですもの」
「え!?ボク社長なのに!?」
「社長は特別です」
「嬉しくない特別ッ………!!」
机に伏せるようにする白蘭。少し頬を膨らますユニ。
「私、生放送なんて聞いていません」
「前々から言ってたよ。君が聞いてなかっただけ」
「だって社長の声聞こえないんですもん」
「聞こうとしないの間違えだろう?」
白蘭は自分の事務所のアイドル、ユニに生放送に出るよう説得を試みていた。
彼女は売れっ子のアイドルの癖に人前で歌うのを拒む。
それがネックで、白蘭も苦労させられていた。
「ブルーベルと一緒なんだけど」
「たとえブルーベルちゃんが一緒でもッ……私にはダメです!」
そこまで拒む理由をきっちり問い詰めたい。一体何があればそこまで拒むのだろう。
それでいて歌手をやっているなんてどういう了見なのだろう。
多少の疑問も抱きつつ説得を繰り返す。
「ユニちゃん……γ君も出るんだから。出ようよ」
「γも出るのですか!?」
ちょっとユニの心が揺らいだ。今がチャンスだ。
しめしめ、といった感じで白蘭はまたユニの説得に入る。
「あぁ、γ君だってMMだってブルーベルだって、クロームちゃんだって出るんだよ?」
知り合いの名前をたくさん出され戸惑うようなユニ。
「前からの出るといっていたのにそれに出ないとなるとユニちゃんの面子にかかわるよ?」
「……………仕方がありません。今回は出させていただきます」
よっしゃ、と心の中でガッツポーズをとる。
「じゃ、早速生放送の現場に行こうか」
「はい」
深々とため息をつかれる。そんなため息つかなくったって良いじゃないか。

「では、ユニさんで心の星、γさんでBelive in you。お聞きください」
司会の指示によりイントロが流れ始める。
ユニは清楚な白いワンピースを身にまといリズムに乗るように体を揺らす。
すぅ、と息を吸い込み歌い始める。
γのピアノに合わせてじっくりと深く歌う。流石は歌姫。なんだかんだでうまい。
γはγで大人の渋さたっぷりな歌を哀愁漂わせながら綺麗な英語の発音で歌い流す。
両者の歌が終わり少し息を切らしながら席に戻る。
「お疲れ様です。γ」
「お疲れ様。姫」
ニコリとお互いに微笑み合い生放送を終える。
「ユニちゃん、お疲れ様」
軽く、通りがけに挨拶を交わす。
「あ、クロームちゃん!これからですか?」
「うん………行ってくるね」
「頑張ってください!」
手をガッツの形にしてクロームを送り出す。そして、位置についた彼女が写されたモニターに目を向ける。
生放送は嫌い。今、自分の行動がリアルに伝わる感じがどことなくいや。
でも、見るのは好き。あぁ、同じ時間を共有してるんだ、と感じられる。
きっとテレビを見てる人もそうなんだろうな、と頭の端でそう思いながら友人の歌に耳を傾ける。
出来ればもう出たくはないけど、またこの空気を味わいたいとも思う。
結局どっちなんだろうね、と軽く自嘲気味に笑みをこぼす。
γには聞こえてないようで真剣な眼差しでモニターを見つめている。
MMも次の準備に備えていたりブルーベルも足をぷらぷらさせながらモニターを見つめていたり各々が個性を強調させている。
この空気が、どことなく好きである。
          -fin-
そんな意味もないアイドル編。笑


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