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花泥棒と龍の笛1
いつものように百足に呼びつけられて魔界へ向かう飛影に、珍しく蔵馬が同行した。



パトロールには数日かかる見込みだったので、落ち合うおよその場所と日取りを決めて軽い口付けを交わす。


そっと離れた唇に、蔵馬は少し寂しそうな、飛影はやや照れくさそうな笑みを浮かべ、二人はそれぞれの目的地へ赴いた。




――そして三日目の朝。
冷水で洗った顔をがしがしと不機嫌に拭う飛影の目の前に、躯が見慣れぬものを突き出した。

百合とも木蓮とも違う、筒状で柔らかそうな薄桃色の…花。



「おい、これはお前んとこの狐の仕業じゃないのか?」

「…何だそれは」

「今朝時雨が見つけて来た刻不知(ときしらず)の花だ。三日三晩で美味い酒ができる。
咲くのは四半世紀に一度とも半世紀に一度とも言われる代物だし、何より今は開花の時期じゃない。
明らかに人為的に咲かせたものだろうな」

「何故蔵馬だと決め付けるんだ」


――阿呆じゃないのか飛影。以前お前が持ってきた植物と同じ匂いがぷんぷんするぜ。



「いい女は鼻が利くんだよ」

「…ちっ、気に食わん奴だ」


――あのお綺麗な相棒の話となるとあからさまにそわそわしやがって。どっちが気に食わん奴なんだ。
…面白そうだ。ちょっと泳がせてみるか。



「お前、ひとっ走り蔵馬のところに行ってどんな手を使って咲かせたのか聞き出して来いよ。ついでにありったけ摘んで来い。酒ができたら宴会だ」

「…パトロールはいいのか」

「オレにとっては酒の方が重要だ。さっさと持って帰って来い」


――と言うか、もはやパトロールなんぞ上の空だろうが。にやけた顔でうろつかれても迷惑だからな。



決まり悪そうにしながらも性急に飛び出して行こうとする飛影を、躯は慌てて呼び止める。


「おい飛影、こいつが咲くのは静寂の丘の近くだ。そう遠くないが、場所の見当はつくか?」

「蔵馬の妖気を辿って行けばいい」


――…そうかよ、そいつはご馳走様。



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あきゅろす。
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