SR:対等の立場


セフィロス×ルーファウス
(副社長は頻繁に神羅にいますよ設定)


今日、と言うより今現在だが、誰かが面会に来ると言った類の連絡は全く受けていない。それなのにこの男は、何なのだ。見た事はある、当たり前だろう、我が神羅の英雄セフィロスなのだから。護衛としてソルジャーを就けるとセフィロスが来る事はあったが、それ以外で交流を持った事はない筈だ。


「おい、お前、」
「副社長と呼べ。俺はお前の上司だ」
「…お前じゃない、セフィロスと呼べ、ルーファウス」
「………だから、お前は俺をそう呼んでいい立場ではないのだぞ!」
「立場、ね…」


副社長室の奥にどっしりと構えてあるデスクとセットになっている革素材のチェアに腰掛けている俺。セフィロスはそのデスクを挟んだ奥に立っている。…まあ目の前なのだが。不意にセフィロスの腕が此方へと伸びてきて頭、否、髪の毛を触られた。くるくると遊ぶように巻かれて、正直言って不愉快だ。くすぐったい。他人に触られた事など記憶に無いから、その感覚に背筋がゾクリとなる。鳥肌まで立ってきた。果たしてセフィロスとはこうやって愉しそうに笑む男だっただろうか。


「…っ、気安く俺の髪に触れるな」
「俺はお前を上司と思った事は無い」
「なに?」
「大体俺の上司はお前でない、不本意だがプレジデントだ」
「そ、れは…」


わかっているつもりだ。親父と言う障害物がある以上俺の副社長と言う肩書きは大した意味を成さない。何を言っても、俺を邪魔に思っている親父が俺の意見を通してくれる事は無いし、皆、俺はプレジデント・神羅の息子だからこうして副社長の座に就いているのだと思っている。口に出す事はないが大体わかる。


「そう。今のお前は何も持っていない。実力はあるのに彼奴の所為で発揮できる場が無いんだ。だから、お前はいつも寂しそうに何処かを見ているな」
「…何も、何も持っていないと言うな!そんなの貴様もそうであろう!親も、出身もわからない癖に!」
「嗚呼そうだな。わからない。だからお前の気持ちもわかるんだ」


髪を弄っていた手が止み、その手が肩まで下りた。がしりと掴まれ、ソルジャーの彼からすれば普通の力なのだろうが俺からしてみれば少し強すぎ、痛い位だ。セフィロスに顔を逸らすなと無言の圧力が掛けられている様で、彼の瞳から己の視線を外せない。その瞳の強さに俺は久々に心から驚いていた。無口だと思っていた、他人のことなど考える様にも思えなかった。そのセフィロスが。心配、を…?
馬鹿な。俺に構う程こいつは女に不自由などしていない筈だろう。そんな趣味があるとも思えない。…ソルジャーは男だらけの集団ではあるから、或いは…否…。


「何を考えている、ルーファウス」
「だから、名を呼ぶなと……、まあいい。どうせお前は俺に同情した振りをして俺で楽しんでいるのだろう?」
「…そんなつもりはない。俺が同情とか、情けをかけてやる人間に見えるか?」
「見えん」
「だろうな。ずっと、ルーファウスの存在、気になっていたんだ。お前、そこらの女よりよっぽどソソる良い男だ」
「…否定はせん」


フ、と笑ってやれば同じくセフィロスも笑った。こいつに良い男と言われても嫌味にしか聞こえないのは何故だ。…俺もセフィロスを綺麗な男だと思っているからだろうが。近付いてくる唇を拒む事なく受け入れた。意外に、良かった。慣れているのだろうか、こういう行為は。体が蕩けそうになる程、心が気持ちよくなる、セフィロスの見かけには反した口付けに思える。こんなキスをしたのは初めてだ。


「…ッ、う…」
「そういう訳で、これからの護衛は必ず俺を選べよ。俺とルーファウスとの約束だ」
「だからお前は命令できる身分じゃ…ッ!」
「命令じゃない、約束だと言ったろ。それに、セフィロス、と呼べ。これから恋人なんだからな」
「お前…は…!先ほどから勝手にことを運んで…俺にも喋る時間をよこせ!」


バンッ、と勢いよくデスクを叩きながら立ち上がると自分よりも数十センチ長身のセフィロスは俺の頭をまた撫でた。思ったより優しい瞳に、反抗する気力が吸い取られて行く様だ。


「喋る余地を与えていては、お前、いつまで経っても俺に心を開いてくれないだろう」
「…それは」
「上司と部下、じゃない関係も案外悪くないものだぞ、ルーファウス。じゃあな」


仕事がある、と扉から出て行った。なんだかあっという間だった。腕時計をちらりと見れば、軽く10分は過ぎていた。皆が想像するセフィロス、とは違いすぎる印象を受けたが、悪くなかった。飽き飽きしていた仕事、そして世界。興味が湧くものも別段無かった俺の心臓が、久し振りにどきどきと激しく鳴っていた。
俺は何も言っていないのに勝手に恋人などと言われたが、不快感は無かった。



*****


シリーズっぽくなりそうです。
20090305






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!