SS:Sweet present


セフィロス×スコール
(気高き〜…設定)


大人しく俺のものになると思っていたスコール。だが、自分達以外に人もいないのに時間が経つにつれて羞恥心が湧き上がってきたらしい。正気になったかのように力強く俺の腕を掴んでひょんひょん、とライフストリームの中に浮く岩場を上へ上へと跳んで行く。自分もスコールの手を振り払いはせず、着いて行くことにした。


「…ここまで来れば気付かれないか。セフィロス、ここで暫く休んでもいいか?」
「構わないが。別にここは滅多に人も通らないだろうし、わざわざ此処まで上がってこなくても良かったのではないか」
「じゃあ、もし人が通ったらどうするんだ」


岩場に背を預け、腰を掛ける。落ちない様に気をつけて。この場から落ちればライフストリーム、或いはデジョントラップに呑み込まれて命は無いだろう。まあ、呑み込まれるという以上高さなど関係無いが。向かい合わせと言うには遠く、隣り合ってと言うには近過ぎる微妙な位置関係で座っている俺たち。スコールは、頻りに下へと気配を向けているようだ。こんな落ち着きのないスコール、果たしてコスモスの連中は見た事があるのだろうか。


「見られたくないのか?俺が敵だから?」
「…そうじゃ…ない…。あんたと居る時間を邪魔されたくな…いんだ」
「そうか」
「ッ恥ずかしいんだぞ!?少しくらい反応しろ!」
「そういう反応が見たかったんだ」


フ、と笑ってやると、力が抜けた様に岩にずるずると寄り掛かっていく。スコールの事はある程度知っている。そしてアルティミシアという女からも話を聞いた。普段、こんな風な反応を見せる事は無いらしい。だからこそ、焦らして、恥ずかしがるスコールの表情を見るのが楽しい。
悪かったと頭を一撫でしてやると落ち着いたのだろうか、ふい、と視線を逸らされ、その後別に、と小さな返事を返された。


「…………なあ、あんたは腹が空いたりはしないのか?」
「?…いや、特には」
「そうか…」
「スコール、お前何か食べたいのか?」
「…まあな」


生理的なものなのだからそんな躊躇う必要は無いと言うのに。それすらもスコールは恥らうのか。と言うよりかは遠慮、に近い。そんな遠慮なら何処かへ捨ててしまえばよいものを。
自分の懐に手を差し込むと、小さなころころとした物が数個指先に触れた。そういえば…記憶を掘り返してみれば、クジャに渡された、否押し付けられた。いざと言う時にこれを食え、と飴玉を渡されたのだ。思い切り着色料を使い込んでる様な原色に近いピンクの色を口に放り込む気は起きなかった。それに漂ってくる僅かだが甘美な香り。なんとなく嫌な予感がしたのだ。


「セフィロス、それは何だ?」
「…飴だが。食うか?」
「いいなら貰う…、あんたはそう言うの食わないんだな」
「嫌いではないが、滅多に食う事は無いな。ほら、」
「ああ」


嫌な予感のするものをスコールにやってしまった事にもう遅いが少しだけ後悔していた。毒が入っている訳ではなさそうだが。大丈夫なのだろうか、と暫くスコールの様子を窺っていると、小さく、だが今までのとは違う何かを感じさせる吐息を吐き出した。人が死ぬ時に見せるような苦しみの表情は浮かんでいないが、その代わり荒い呼吸と共に肩が少しずつ上下に動くようになり、頬が上気し始めた。


「はぁ…ッ。あんた、本当にこの飴、ッしか無いのか…?」
「言ったろう、俺は飲まず食わずでも大丈夫だ」
「…じゃあ、なんで…これを、」
「クジャと言う男に渡された。いざと言う時に食えと」


俺が言うと、スコールからの返事は来なかった。どうしたのだろうとそちらを見ると俯いて何か考えている様だった。少ししてからそろそろと此方へ立ち上がらずに体を引き摺る様にして近付いてきた。そのスコールが手に持っていた物は、チョコレートだった。板状に物ではなく、一口サイズの球状のチョコレート。それがどうしたのだとスコールに問うと、一瞬躊躇う素振りを見せてから口を開いた。


「…ジタン、がこれ…を」
「まさかな…。スコール、何と言って渡されたんだ」
「イイ、時に…食えって……っう」


ジタンとクジャは同じ世界からやって来たと聞いている。似たような台詞と共に押し付けられたそれぞれの食い物。そして渡した二人の性格を踏まえて、改めてスコールを見ればもうこれが何かは嫌でも決まってしまう。
…奴らは媚薬入りの食い物を所持しているということになる。用意周到と言うか、この世界でいつ使う機会があるというのだ。スコールの持っていたチョコレートの包装を開いて中を割るように軽く歯でかじると、その割れた部分からとろりと、液体が零れ落ちた。呆れながらもそれとはまた別のものが沸々と泡のように浮いてくる。


「…スコール、大丈夫か」
「……わ、からない…。本当、あいつら何で…こんなもの持ってんだ…」
「全く、趣味が悪いな」
「ああ」



*****


このまま行くとまずい、なんか変な方向に向かって行ってる。






あきゅろす。
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