雪が溶けたら
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恭平&慧子→小学五年。1月後半頃
大雪の降る中、恭平と慧子足を雪に埋もれさせながら歩いている
恭平『その夜は雪が……しんしんと降り続いていた。』
恭平「おい……歩くの早ぇよ……慧子」
慧子「こんな雪程度で、歩けなくなるなんて…恭ちゃんもまだまだね」
恭平「意味わかんねぇし……はぁ…寒ぃ……もう帰ろうぜ?」
慧子「ダメ!帰るってどこによ、もう私には帰る家なんてないんだから」
恭平「……そんなに意地張らなくてもさ……もうおばさん怒ってないよ、きっと」
慧子「だって…だって…私のことぶったもの!あんな家二度と帰らない……」
恭平「慧子……。」
恭平『俺は……おばさんと喧嘩して家出した慧子に付き合わされ……延々と雪の中を歩いた。寒くて寒くて…手や足の感覚がなくなりそうだった……。それでも……俺と慧子は行き先未定の雪の中を黙々と歩き続けた』
慧子、突然立ち止まる
慧子「……恭ちゃん。」
恭平「…ん?どうした…?」
慧子「………ごめんね。」
恭平「今更何だよ……。」
慧子「……もし、このまま雪の中に閉じ込められちゃったら…どうしようね…」
恭平「……春が来れば雪も溶けるよ……だから大丈夫」
慧子「春になったら……私達6年生だね。また恭ちゃんと一緒のクラスがいいなぁ」
恭平「うん……もう帰ろう?慧子。ほら」
恭平、慧子に手を差し出す
慧子「……恭ちゃん。私……大きくなったら………」《俯いて小さな声で》
恭平「……え?」《慧子の声が聞き取れず、思わず聞き返して》
恭平『あの時……慧子は何て言ったんだったかな?……声が小さ過ぎて聞こえなかった。でも……何だか聞き返せなくて……そのままになってしまった』
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