桜の面影2 ◆
とっくに衣服は全て取り去られ、全身あますところなく小十郎さんの腕に撫でられ、愛撫を受ける。
胸の飾りはジンジンと痺れ、刺激を受けすぎたことが確認せずとも分かるくらいに張り詰めていて。
先ほど己が吐き出した精液を潤滑液代わりに、後孔には既に指が三本挿入されて。
時折ぐちりと微かな水音をたてて、内部を探り続けている。
「っ、ひぁ…」
ぞくりと、背中を逆撫でするかのような感覚に、思わず漏れた声。
あまりにも女みたいな嬌声をあげてしまったため、俺様の顔が羞恥に染め上げられるのは一瞬だった。
「佐助…」
名を呼ばれて顔を上げると、小十郎さんは柔らかい笑顔をたたえて、くすくすと笑っていた。
――その顔は笑っていたけど、何故だか寂しそうな気がして。
俺様は口を開けて何かを言おうとしたけど、何を言えば良いのか分からなくて、そのまま口を閉じた。
数秒間見つめていると、ふいに浮上感を感じる。
組み敷かれていた体勢から、座っている小十郎さんを跨ぐ体勢にと変えられた。
「…どうしたの?」
「…そろそろ、いいか」
「え?」
見当違いな返答に戸惑う間もないまま、小十郎さんの唇が首筋にと落ち、己の後孔には張り詰めた熱い塊があてられた。
そしてそのまま、小十郎さんのモノが俺様の内部にゆっくりと割り入ってくる。
「ん…、くっ…ぅ」
小十郎さんが充分に解かしてくれたために痛みは無い。
でも、内臓が圧迫される感覚が苦しくて息を漏らすと、いつの間にか己の背に回された小十郎さんの腕が、まるで赤子をあやすかのように背をさすってくれて。
…俺様は心から安堵した。
「っ、は…」
自重の為か、いつもよりかなり楽に全てを納めきることが出来た。
息を吐いて、できるだけ息を整えている俺様に、小十郎さんが低い声で呟く。
「…今日は、お前が動いてくれるか?」
「えっ、ちょ、いきなり何…」
――今の状態でもいっぱいいっぱいだっていうのに。
「少しだけ、手伝ってやるから、な」
そう言うやいなや、脇を掴まれて、小十郎さんの雄が抜ける寸前まで持ち上げられた。
そして、掴まれていた脇から手を離されて、今度は自重によって一気に飲み込んでしまう。
「ひああぁぁっ!!」
腸壁を上下に擦られて、嬌声を上げて小十郎さんの厚い胸板にもたれ掛かる。
たった一往復。
たったそれだけの刺激だけで、俺様の内部の欲が更に強い欲を求めるには充分だった。
「くっ、ん…」
なんとか腕に力を入れて、小十郎さんの肩に掴まる。
ズッ、と音をたてて自分の身体を持ち上げて、抜けそうになったら力を抜いて一気に喰わえ込む。
最初こそ、一往復ごとの刺激に身体が過敏に反応していたが、次第にそれだけじゃ物足りなくなって。
自分の中の感じる場所ばかりを夢中で責めたてた。
「ひっ、あぁっ!!」
まだ室外は明るいというのに、ほの暗い室内は卑猥な水音と肉がぶつかり合う音、そして俺様の口から漏れる喘ぎだけが響いて…。
「やらしいな、佐助…」
「んっ!そんな、ことっ、言わっ、ないで、あぁぁっ!!」
――恥ずかしいのに。
「可愛いなあ、佐助…」
「やっ…からだ、止まんな…ぁっ」
「気持ち良いか、佐助?」
「んっ、いいっ、きもちいっ…!」
「…そうか、」
小十郎さんの声は心地良くて、身体が興奮して、まるで麻薬みたい。
快楽だけを追いかけて、身体が一気に登りつめる。
ゴリ、と内部のしこりを勢い良く突き上げると、目の前が白色に瞬いた刹那。
「――あっあぁぁあ!!」
「…っ、は」
張り詰めていた己の自身がびくりと大きく震えながら、白濁の欲を吐き出した。
それと同時に、内部に注がれた熱い液体。
内部でびくびくと蠢きながら残りの一滴まで白濁を出されるだけで、達したばかりの身体には刺激が強すぎる。
身体を自ら支えられず、前のめりに小十郎さんの胸板にもたれ掛かってしまう。
余韻が気持ち良くて浸っていると、小十郎さんが少し強めの力で俺様を抱き締める。
「さ、すけ」
「、どう、したの?」
「…好きだ」
耳に届いたのは、またも見当違いな返答。
「珍しい…ね、小十郎さんが、そんなこと言う、なんて」
「佐助…」
「…俺様も、好きだよ。…これから一生、小十郎さん以外いらない」
「…佐助」
「大好き、小十郎さん…」
いつもなら、恥ずかしくて言えないことばかり。
でも、何故だか今日はそれが口をついて出た。
「佐助…、」
小十郎さんが呼ぶ声が心地いい。
そして、次第にまどろみ始める意識。
いつも以上に自分で動いたから疲れたのか、俺様は簡単にソレを手放した。
「…たくないなぁ…佐助…、」
小十郎さんが、意識の外で何か呟いた気がした。
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