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自覚した気持ち1※無自覚な恋続編

※佐助目線



庭に面する縁側に腰掛け、俺は空を見上げていた。

「はぁ…」

零れた溜め息は、青すぎるくらい澄んだ空に吸い込まれる。



伊達軍が上杉を攻めた戦から数月。

それと…俺が伊達軍の軍師である片倉小十郎と出逢ってから、数月が経過していた。

あの時、身体中に負った怪我もほとんど癒え、最近は簡単な任務ならこなせるようになっている。

身体も快方に向かっているし、この所は、各地の武将にも目立った動きは無い。
一時的だが、いわゆる平和、なのだ。

だが、

「はぁ…」

寝ても覚めても、頭の片隅に必ずいる存在があった。

「…片倉、小十郎、か…」

気付かず口から漏れた名前。
伊達軍の軍師である、あの男の姿が忘れられない。
鋭い眼光に左頬の古傷。
後ろにきちんと撫でつけられた黒髪。

それと、上田城の裏手で別れた際の、口付け…。

「…っ、」

そこまで考え、顔が火照っていくことに気付くと、ぶんぶんと頭を振って、空を見上げる。

己の身体が、動けるまでに回復してから…
いや、上田城に帰ってきてからというもの、片倉さんの事を考え、赤面してから頭を振って空を見上げる。
…という行動を何度繰り返したかも分からなかった。

「一体、どうしちゃったんだろ、俺様…」

「まだ体調が優れないのか?」

「っ、うわぁ!?」

独り言だったはずなのに、返ってきた声。
驚いてから辺りを見回すと、心配そうに眉を寄せて、こちらを見つめる主、真田幸村の姿があった。

「だ、旦那…」

いくら考え事をしてたからって、主が近付いてくる事にすら気付かないなんて…。
不覚…というか、忍失格じゃないの…。

かなりの自己嫌悪に陥っていると、旦那はそれに気付いているのかいないのか。
心配そうな顔を崩すことなく、口を開いた。

「佐助…お主、まだ体調が万全ではなかろう?」

「う…。そう、みたい…」

ずばりと真田の旦那に言い当てられ、力無く頷く。

体調、っていうか、俺様の頭が変なのかな。こんなに、あの人の事ばっかり考えて…。

「任務にも、あまり身が入っておらぬように見える」

「…すんません」

旦那にもばればれなんて…。何だか自分が不甲斐なさすぎる。
今までなら、体調が少し悪くても、旦那に感づかれることもなく任務をこなせたのに。

「…そこでだな。お主に数日、暇を出そうと思う」

「い、暇?」

「うむ、温泉にでも行って、身体を癒やしてくるのがよかろう」

「でも…」

今まで怪我して数月も休んでいたんだから、こんなに休むわけにはいかない。
断ろうと言葉を発するよりも早く、真田の旦那に追い討ちの言葉をかけられる。

「いいな佐助、これは命令だ」

「…了解」

渋々了承したその言葉に、旦那は満足気に笑顔を浮かべ。
明日から暇をくれる事と、期間は己で決めて良いという事を告げ、去って行ってしまった。

「休暇、かぁ…。どーしよ」

言葉と同時に溜め息を吐いて、空を見上げる。
頭上を飛ぶ鳥が、奥州の方向に行ったのを見ると、再び思い出すのは片倉さんの事。

「…そういえば、お礼言ってないなぁ」

助けてくれたお礼をしようと思っていたのに、それをすっかり忘れていた。
身体も動くようになったし、この暇が終われば、次いつ休めるかも分かんないし。

明日からの暇は、奥州へ、片倉さんにお礼に行こうと、自然にそう思った。

「よし!」

そうと決まったら…。
勢い良く腰を上げ、長旅の準備をするため自室へ向かった。

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