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止められない心2


「さ、猿飛、」

「黙ってて」


焦ったような声色で片倉さんが俺様の名を呼ぶ。
だけどそれを制して、再びその行為を開始した。


「ん…」


どちらが漏らしたか分からない吐息。
ちゅ、と僅かな水音をたてて、片倉さんの薄い唇に吸いつく。
そのまま片倉さんの唇をそっと舐めると、固く結ばれていた唇が僅かに開かれた。


「さる、と…」


片倉さんが俺様の名前を呼ぶ前に、己の舌を片倉さんの口内に差し込んで更に行為に集中する。


―――入り込んだ片倉さんの口内が熱くて、くらりと目眩がした。


自分の中の熱い気持ちを必死に無視して、片倉さんの歯列や上顎を蹂躙していると。
ふと、片倉さんの舌と己のソレが触れ合った。


「んぅっ」


女の矯声にも似た上擦った声が、片倉さんではなく俺様の口から漏れる。
今までされるがままだった片倉さんが。
いや、片倉さんの舌が。
俺様の舌を絡め取って、逆に口内を蹂躙されることになってしまった。


「ふ…ぅっ…」


いきなりそんなことになれば、声が出るのも仕方ないことで。


「…ん、んぅ」


―――やばい。

片倉さんに歯列をなぞられ、舌を吸われ、上顎に刺激を受け続けながら、頭の片隅でそう思った。

身体中から力が抜けていく。

それは言わずもがな、快感というヤツが原因で。


「あ…はぁ…」


窓枠に腰掛ける片倉さんに口付けると、自然と上体のみを預ける格好になる。
その状態から力が抜けていった為か、いつの間にか己の腰には片倉さんの腕が回り、俺様を支えてくれていた。


――最初にしたの俺様なのに。


いつの間にか主導権は片倉さんに渡り、口内に断続的に与えられる快感に俺様はただ耐えるしかない。
それが何だか悔しくて。
閉じていた目をそろりと開けると、ぼんやりと片倉さんの紅く染まった顔が目に入り、心臓が一層高鳴りをあげた。

それと同時に、自覚した。
今まで以上にはっきりと。


――俺様は、片倉さんの事が…。と、頬を熱いものが伝い自分が泣いていることが分かった。

それに気付いた片倉さんが唇をようやく離して、俺様の瞳を見つめる。


「…猿飛」

「っえ、あれ…なんで泣いてんだろ…俺様…」

「嫌だったか」


寂しいような色を含んだ片倉さんの声が聞こえたから、ブンブンと首を横に振って否定する。


「っ、いや!別にそーいうんじゃなくて…っ!そもそも俺様から、した事、だし…だから、その…」


――気にしないで。

と言って微笑んでみせると、片倉さんはようやく寂しそうな表情を和らげ、先程見せたような微笑を俺様に向けた。


「っ!」


途端、収まりかけていた心臓の高鳴りが激しくなる。
間近で見える片倉さんの瞳には俺様が映っていて。


「…あ、」

「猿飛?」


殊更優しい声で呼ばれ、顔が羞恥に染まる感覚。
恥ずかしい。
恥ずかしいのに。
目が離せなくて、紅い顔のまま片倉さんを見つめる。


「どうした?」


またふんわりと笑う片倉さん。


「………好き……」

「…猿、とび…今、」


己の口をついて出た言葉に、上手く作動していなかった脳がいきなり反応する。

今、

今、俺様、なんて…?


「…え、えっと!今のは、そのっ!」


自分でも動揺しているのが分かるくらいに何とか弁解を口にするが、上手く言葉が作れなくて、尚更焦ってしまう。

慌てながら、片倉さんの顔を見ると、片倉さんの顔が近づいてきて、自然と距離が近くなり、再び口付けをされた。


「ん、っ…」


ぎゅ、と片倉さんの腕が俺様の背に回されて、傷が痛まない程度の力で抱きしめられる。
さっきはされなかった仕草。
でも何故だろう、嫌悪感は感じない。

ふわふわする頭でその理由を考え始めた刹那。


「ひぅっ!」


背中に回されていた片倉さんの手が、熱くなった俺様の服の中に滑り込み、腰を撫でられた。
反射的に漏れた声は、俺様の意識を引きずり戻す。
俺様は片倉さんの肩を押して、腕の中から逃れ、窓枠に手をかけて飛び出した。











―――気付いた時には、見覚えのある山中にいた。

それほど遠くない場所に、上田の城のかがり火が見える。


「…上田?」


自分に確かめるように声を出して、ここは本当に上田だと認識する。
いささかふらつく足で、数歩進んで、その場にしゃがんで頭を抱えた。


自分はどうやって上田まで帰ってきたのか?

分からない。

けど。

今はそれどころじゃなくて…!!


「…どーしよ」


自分が片倉さんに何をしてしまったのか。
そっちの方が気になって、俺様はしばらく顔を上げられないままだった。





end

2011.02.19 柑奈



後書き

小説によって、佐助の一人称が「俺様」だったり「俺」だったり、「両方ごちゃ混ぜ」だったり…。
…すみません、まだ安定しておりません。
見逃してやって下さい!(汗)

とりあえず、この話はまだ続きます。
次か、その次くらいで完結予定…です。

こんなに長くなるなら、長編小説として書けば良かったですね。

すみません…。無計画に書いた結果です…。

もう少しなので、頑張って書きますので、これを読んで下さっている神様みたいな方、もう少々お付き合い下さい!

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