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熱に浮かされて3



…う、うん。
自分の顔が赤くなっているであろう事は自分でも分かる。
心臓は破裂しそうな勢いのまま早鐘を打ち続けているし。

けど、

けど…!

俺の顔が赤くて可愛いってのは、変だ。
絶っ対、変だ。

普段の小十郎さんなら、こんな事言うはず無いもの。

「小十郎さんっ、やっぱり寝てないと!!熱のせいで可愛いように感じるだけだって!」

「…。何言ってんだ、佐助。」

「だ、だから熱で…」

「お前はいつだって可愛いじゃねぇか」

「…っな!」

絶句という言葉の意味を二十余年生きてきて、初めて理解した。
反論の言葉が見つからないどころか、
まともな単語すら口からは出てこなかったんだから。

「佐助…」

あれこれ考えているうちに、ふと聞こえた声。
目を向ける間もなく、小十郎さんの手が自分の顎先に触れた。
かと思うと、顎が少しだけ持ち上げられ、
眼前には熱によって頬を染めているであろう小十郎さんの顔が間近に迫ってきている。


う、わ…
これってもしかして。
つーか、もしかしなくても…。

ぐるぐる回る頭の中身。
更に近づいてくる愛しい人の顔に、頭の中は混乱に混乱を重ねているようだ。
反射的に目を閉じたが、自分の顔に宿った熱は殊更に上昇した気がして。
小十郎さんが熱を出していることすら、一瞬忘れてしまっていた。

「ん、」

ふ。と、どちらともなく息を漏らして間もなく。
自身の口に触れた柔らかいもの。
それが小十郎さんの唇であろうことは、以前にも数回ほど経験したことで、間違えるはずはない。


「…?」


おかしい。
いや、可笑しいのではなく変なのだ。
いつもなら、触れた唇がそろそろ離れてもいいのに。
やっぱり、熱のせい?


そう思い、自ら身を引こうとした瞬間、両肩を押さえつけられて。
ぬるりとした柔らかいものが唇にと触れた。

「えっ」

驚いて声を上げた瞬間を見逃さず、ソレは口内に強引に侵入してくる。

「っ!」

驚いて目を開くと、眼前にぼんやり見えるのは、やはり小十郎さんの顔。
そこでようやく、己の口内に強引に入ってきたのが小十郎さんの舌であると理解した。

「ん、ちょ…っ、ふぅっ」

歯列の裏側から、上顎の内側を舐めまわされ、絡めとるように吸われる舌。

自分の口内を、自らの意志を無視して刺激される事実に不安を感じる。
でも、それに隠れてしまうほどの小さな別の感覚が現れたことに、俺はまだ気付いてはいなかった。

「…っは、」

無意識のうちに小十郎さんの袖を握っていた右手が、床に滑り落ちた。



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あきゅろす。
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