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「とか」(伊ロマ)


わりときたない話……





るるるるる、るるるるる、ぴっ。
「……はい?」
『兄ちゃんいまなにしてた?』
「何の用だよ」
『あのさ、帰って来れないかな』
「は?」
『なんかさあ』


歯磨いてたら血出てきてとまんないんだけどどうしたらいいかな、って、おまえは今年で一体いくつなんだ。仕方ないから俺は頼んだばかりのラテを急いで飲み干し、降りたばかりの駅へ急いで戻り、つい30分くらいまえに出てきたばかりの我が家へとんぼ返りだ。イライラするので、ドアを開けるなり弟の名を怒鳴った。


「フェリシアーノ!!」
「はいはいはい」

おかえり、って出てきたフェリシアーノはタオルで口元をおさえていた。まだ血は出てるらしい。みしてみろ、ってタオルを引き剥がすと、血がちょっと垂れた。

「えっ……」
「まああんま痛くはないんだけどねえ」
「いやなんか俺の想像を超えてるんだけど……これどっから、」
「ここ」

あ、って口をあけてみせた弟の口内の、左頬の内側に傷らしきものがみえて、そこから赤くぬめった血がとろとろ出てくる。絶句して凝視していると、血が喉に入ったらしくてフェリシアーノは腰を折って酷く咳き込んだ。

「うわうわうわ、大丈夫かよ」
「うっ…血 おいしくない……」
「まあそれはなあ……なに、歯磨いてたら傷開いちまったっていう」
「そうそう……おえっ」

顎にびちゃびちゃ垂れる血と唾液のまじったのをタオルでぬぐってやると、ごめんねえってフェリシアーノは笑ってタオルを受け取った。よくみりゃ真っ赤だ。

「なかなかとまんなくてさー」
「口んなかの傷はなあ」
「どうしよう……歯医者さん?」
「……口腔外科?」
「は?コークーゲカ?なにそれ」
「………………」

口を無理矢理開かせて傷口にタオルを押し当てた。口のなかの傷口。フェリシアーノはまたえずいたけど無視だ。4秒くらい押さえて引き抜くとタオルが赤い糸をひいた。きたねえ。

「あにすんの……!」
「あ、結構落ち着いたんじゃね」
「えっほんと?」
「おー」

フェリシアーノが洗面台に駆けていくのを追いかける。弟は口をでかくあけて鏡を覗き込んでいる。な、と肩を抱くとまあね、と頷いてみせた。

「にしてもアレはないと思う……」
「タオル?」
「タオル!」
「しょーがねーだろ、口んなかだったんだから」
「………………」
「……あー悪かったよ!その顔やめろ!」
「別にいいよもう。それより口んなかがすごい、……あーきもちわる」
「……コーヒーとかいれる?」
「いやいや確実にしみるからねそれ」
「じゃあキスとかする?」
「きっ…………とか?」
「おら口開けよ」

多分「とかってなに!」みたいなことを言いかけた口に舌を突っ込むと成る程まずかった。血と繊維と水道水の味がする。

「ぅえっ」
「だから言ってるでしょ……」

まさかフェリシアーノとのキスで吐きそうになるとは思わなかった。さっきまでタオル突っ込んでてそのあとうがいしたせいで口のなかがさらさらしてる。気色悪い。のに、今度はフェリシアーノが離してくれなかった。

「やだよもうまずいもん!」
「兄ちゃんがキスとかしよって言ったんじゃん」
「しただろ!」
「キスしかしてないよ」


ほらほらキス「とか」しよ、って笑うフェリシアーノの傷が、激しい運動のせいでもっかい開けばいいって思った。



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