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忘れんぼうのパパサンタとトナカイと



「おーすげー。俺初めて見た」

「自分の息子達の可愛らしい行動を、天然記念物を見たように言うナ」



忘れんぼうのパパサンタトナカイと




―明日はクリスマス


そーっと襖越しにすやすやと寝息をたてている息子達を覗いていると、二人の枕元に靴下が置いてある事を発見した。
初々しさを感じるその行為に親二人は頬を緩ませた。


「枕元に靴下置いてる奴なんて生まれて初めて見たぜィ」

「まだサンタ信じてるアルよー。可愛いアルな」

「あんなちっちゃい靴下にプレゼント入るかねィ………あ」

「どしたネ?」


やべ、と右手を頭に当て顔には出さないが、沖田は少し慌ててるように見える。何か嫌な気がして直ぐに神楽は沖田を問いただした。


「どうしよ。プレゼントをパトカーん中に忘れてきちまった」

「えぇっ!?」


今日は24日。普通クリスマスプレゼントは今夜枕元に置く物だ。
だが、それがない?


「ヤバいヨ!明日靴下にプレゼント入ってなかったら、しんごとそら悲しむネ!グレちゃうヨ!」

「まぁまぁ、落ち着きなせェ」


そう言いながら沖田はポケットから携帯を取り出し、何やらどこかにかけ始めた。神楽は少しは慌てて欲しい、父親としての責任は無いのか、と心の中で罵ったが今は黙って沖田のする事を見守っている。
何回かのコール音の後、電話の相手がでた。


「あ、もしもしー?サンタさんですかィ?」

「サンタさん?」

「ちょっとパトカーの中に忘れ物しちゃったんで届けてもらえないですかねィ?じゃ、お願いしまーす」

「ね、大丈夫なのカ?」


心配そうな顔で見てくる神楽に優しく微笑み返す。
暫くしたらちゃんと届けに来てくれるからと伝えて、冷蔵庫を開けビールを飲み始める。


「ほら、お前も酎ハイでも飲めば?」

「……いらないアル」

「だーかーら、心配はいらねェって言ってんだろィ。そろそろ届くから……」


―ピンポピンポピンポーン


「あ、来た」


神楽が鍵を開けると勢いよくドアが開き、両手にカラフルな包装をされている包みを持って立っている土方がいた。


「総悟ォォォ!!てめ、勝手に用件言って勝手に切んな!」

「あ、多串君!プレゼント届けに来てくれたアルか?わ〜助かったアル〜」


神楽に2つのプレゼントを手渡し、リビングへと煙草を吹かしながら歩いていく。晩酌していた沖田を見つけるや否や、ソファーの後ろから蹴り上げた。


「ひっでぇや土方さん。買ったばっかのソファーなのに壊れたらどうすんでさァ」

「それはこっちの台詞だ。夜に電話して頼んできたと思えば、本人は酒飲んで寛いでるしよ」

「俺がわざわざ屯所に行くより、屯所にいる土方さんが届けに来た方が効率良いに決まってるし」

「お前が楽なだけじゃねぇかァァァ!!」


相変わらず自分勝手さにキレる土方をよそに、神楽がお盆に熱燗を乗せてやって来た。土方に座るように促すと、大人しく沖田の向かいに座った。


「多串君ありがとネ。これから時間あるんだロ?だったら少し飲んでくといいネ」

「…あぁ、わりぃな」


すっかり良妻となった神楽にまだ慣れず、少し照れる。頬を染めてると、前から痛い視線を感じる。


「人妻、子持ち、歳の差」

「うっせ、んなんじゃねぇよ」


分かってますよと笑う沖田が本気が冗談か分からなくて少し怖い。
お互いに酒もはいってきた時にまたインターホンが鳴った。こんな夜中に誰だ?と思ったが、神楽がなんの不信感もなく玄関に向かったので知り合いだという事は分かった。

そして神楽と一緒にリビングまで来たのは―…


「お邪魔しまーす。あれ?多串君も来てたの?」


ビニール袋に何本かの酒を手に顔を出したのは銀時だった。
最近マダオと時間が合わないから飲みに行けないと言っていた事を思い出し、神楽が電話で誘ったとの事だ。


「旦那いらっしゃい」

「よぅ」

「うす。ガキ共は?」

「もう寝ましたぜィ」

「そっか。んじゃこれ、明日やって」


そう沖田に渡した袋の中には赤いブーツの中にお菓子が詰まってる物が二つ。
ありがとうごぜぇやす、と子ども達の代わりに礼を述べる。そういえば最近これを欲しい欲しいって神楽に強請ってたっけと思い出す。


「おじいちゃん達はあれですねィ。孫には甘いんですねィ」

「「誰がおじいちゃんだ」」


こんな事を言ってはいるが、しんごとそらに馬鹿みたいに甘い。二人が赤ちゃんの時はどちらが抱っこするかで喧嘩していた。そして泣かして神楽に二人してぶっ飛ばされていた。


「夕ご飯余ったの残しといて良かったヨー。はい、これつまみに」


家族でクリスマスパーティーが行われていた沖田家。テーブルにはご馳走が並び、さっきまでケーキを食べわいわいやっていた。子ども達は早く寝ないとサンタさんがプレゼントくれないヨという母親の魔法のような言葉で、すぐに布団に入り寝てしまった。


「わりぃな神楽。これから夫婦の時間だっつうのに」

「ホントでさァ。土方さんもプレゼント置いたらさっさと帰りゃあいいのに」

「届けてもらっといてそんな事言うのはこの口かァ?あぁん?」

「ぼうろくひゃんふぁーい(暴力はんたーい)」


沖田の口をびよーんと横に伸ばし、掴み合ってる二人に天罰が下った。

―スパーン!

神楽のスリッパ攻撃が脳天を突く。


「しんごとそら寝てるネ。静かにするヨロシ」

「「…はい」」

「母強しだな」



皆お酒が良い感じに効いてきて、ほろ酔い気分に浸っている中、神楽だけがお酒を口にしていなかった。
ただオレンジジュースをくぴくぴ飲んでいた。
あまり酒を好むタイプでは無いのは知っていたが、皆飲んでいる時位飲めば良いのに、と思った銀時が神楽に尋ねた。


「おい、神楽は?酒飲まねぇの?」

「うーん。なんか体調悪くて最近飲んでないアル」

「まじでか。大丈夫なのかよ?……あ、まさか三人目デキてたりな!わははははは」

「………」

「はははは………は?…え?何?何で黙んの?」

「まぁまぁ、旦那飲んでくだせぇ」


ピシリと石のように固まってしまった銀時のコップに日本酒が注がれる。
その隣りでも、土方が煙草を手にしたままに固まっていた。沖田が灰が落ちる前に灰皿を下に用意した。


「あれ?銀ちゃんと多串君固まっちゃったヨ?」

「神楽眠いんだろィ?さっき一瞬寝てたぜ」

「まじでか。さっき風邪薬飲んだからかナー」

「多分な。土方さん達も寝ちゃったみたいだし、俺達もそろそろ寝るか」


片付けは明日で良いからと、沖田は神楽の腕を引っ張って寝室へと向かって行った。
リビングとは違いひんやりしている寝室は、眠気をすっきりさせるのに調度良かった。パタリと布団に倒れてしまった神楽を横目に、沖田はハンガーに掛けていた隊服のポケットから何かを取り出し、神楽の左手をとり、それを填めてあげた。


「まだ寝るのは早いぜィ?神楽?」

「んー…?」

「クリスマスの夜だし、楽しむのは子ども達だけじゃねぇよ。それに旦那達の期待にも答えなきゃねィ?」

「…?」



微睡みの中に吸い込まれそうな神楽を自分の元に引き寄せ、覆い被さった。


後の事は自主規制。
朝には子ども達が嬉しそうにプレゼントを抱きかかえ、リビングで未だ固まっている銀時と土方を見つけた。おもちゃにされている銀時と土方が覚醒するのはそれから数時間後の事だった。






メリークリスマス!!
1/7までフリーです^^




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