散文置き場(短編集)
はっぴーばーすでー(一期メンバー)

























「知ってるか?儂、今日誕生日だぞ」







今日という日を待ちわびていた政宗は嬉しそうに話し掛けた。




「お前がそうなら儂もそうだろうが」





しかし、相手は漆黒。
反応は冷ややかだった。



「儂もお前と同じ『政宗』だろうが」

「あぁ………そうか、うっかりしておった」



失念していた政宗は頭を掻いた。



「…………で、何が言いたかったんだ」

「あ、うん………あのな」

「んー?」



しゅんとした政宗を気遣い、漆黒は尋ねてやる。



「何か欲しいものあるか?って聞いてくれ」

「何だそれ………やっぱ面倒臭ぇな」

「そんなことを言わずに最後まで相手にしろ」

「ハァ…………じゃあ、お前は誕生日に何か欲しいものあるか?」



相手にしたことを悔やみ、溜め息を零す。
しかし面倒臭いと思いながらもちゃんと応えてやるのは漆黒の優しさ。



「あのな、儂が欲しいものは…………おまえの、バックバージ「やっぱり聞きたくねぇえッ!!!」



気恥ずかしそうにする政宗に不穏な空気を読み取り、漆黒は言葉を遮った。



「何じゃ?きっちり最後まで聞かんか」

「いや、お前の願いは一生叶わんから絶対口にするなッ」

「テレてるのか?電気は消すから大丈夫だぞ」

「黙らせてほしいのか?」

「積極的だな………ほれ、いいぞ」

「─────────ッ!!」



左目を閉じ、顎を少し上げてキスを催促する政宗に、漆黒の何かが切れた。























「あ、漆黒様、政宗様を存じませんか?」

「知るか!あんな阿呆ッ」

「な………にが……………?」

「何もないわッ」



漆黒の不機嫌さに成実は戸惑った。



「しかし、せっかくお二人のためにばーすでーけーきを用意しましたので」

「いい!奴の分まで俺が食べる」

「え、あ、」



苛つきながら歩む漆黒に成実はおろおろした。



「本当にお屋形様の分まで食べられるのですね?」

「何だ、小十郎?」

「つまりはお屋形様の代わりに、ということですよね?」



漆黒の前に立ちはだかる小十郎。



「ですよね?」

「あ、あぁ…………」



何を言わんとしているのか分からなかったが、威圧されて頷いてしまった。



「445本はさすがに用意出来ませんでしたが、きっちり『ふぅ〜』して消してもらいますよ」

「は!?」



小十郎の手には蝋燭が握られている。



「お屋形様はやる方ですよ?」

「いや、だからって、」

「言い出したのは漆黒様ですよ?代わりにやると」

「これは別だ、ろ」

「おい成実、準備をしろ」

「おい、聞けッ」



小十郎は漆黒の言い分など聞かずに成実に指示を出す。



「さて、面頬はどうされますか?付けたまま?外しますか?」

「は?」

「付けたままだと、顔は隠れますが息が上手く出ないのですんなり消せませんよ?逆に外したら、ふぅ〜の顔を見られますがすぐに消せます」

「な…………ッ」

「さぁ、どちらの羞恥プレイ………いやいや、」

「お前ッ!今本音が出たな?おい」

「いえいえ、とんでもない!儂は漆黒様をお祝いしたいだけにございまする」

「絶対儂で楽しんでるだろ!?」

「漆黒様〜準備おっけーですぞ!点火しますよー」

「ま、待てッ」



しれ〜っとする小十郎に詰め寄るも、成実が煽ってくるので慌てる漆黒。




「さて……………カメラを構えるお主はどちらを所望だ?」

「漆黒様の恥ずかしがるお姿が記録できればおひなはどちらでも構いませぬ!」

「歪んでおるのぉ」

「そういう支倉様は?」

「儂もどちらでも構わんよ……………半泣きで縋って下されば十分じゃ」

「支倉様こそ歪んでまする」



伊達三傑の2人に翻弄される漆黒を、少し置いた距離から眺めていた。




「お前達…………主君である儂を差し置いて随分楽しそうだなぁ………」

「政宗!?」「お屋形様ッ!」



ゆらりと政宗は現れた。



「漆黒…………油断している者を力業で襲うのは感心せぬぞ?おかげで儂、足腰が上手く立たぬわ」

「あれはお前が破廉恥なことを言って儂を煽ったからだろう!」

「……………………」

「ん?」



家臣達の視線に気付いて周囲を見渡す。



「漆黒様も男ですねぇ…………」
「お屋形様に煽られては抑えも利きますまい」
「ストイックに見えて本能的なんですね!!」

「ん……………………?」



漆黒は、政宗と自分の発した言葉を頭の中で反芻し、
家臣の言葉と繋がりを探した。




「………………ば、馬鹿者ッ!!儂は何もしとらん!!変な誤解をするな!」

「まぁまぁ、過ぎたことは構いませぬから祝いの席を進めましょう」

「良くないッ!儂は被害者だ!」

「はいはいはいはい、じゃあ蝋燭をふぅ〜して下さいね」

「しないと言っておるだろう!」



漆黒が弁解しようにも誰も聞かない。



「漆黒…………あれもやだこれもやだと、幼子のように駄々をこねるな」

「こねとらん!!」

「ちゃんとあーんして食べさせてやるからいい子に待たんか」

「お、ま、えッ」



怒りで声が震える



「それは名案ですね!では漆黒様」

「何じゃ」

「ふぅ、とあ〜ん、どちらかでも結構ですぞ?」

「は!?」

「おひなはどれでも構いませぬ!」

「そろそろ点火しまーす」

「ちょっと待てッ!お前等は儂を弄り過ぎだ!」

「皆の好意を素直に喜ばんか?」

「好意と言うより面白がってるだけだろう!?」




漆黒の逃れる道などなく、抵抗虚しく羞恥プレイが始まった。




誕生日なんて大嫌いだ
























12.09.06
××××××××××××××××××××××××××××

政宗様、はぴば〜★
伊達武でのお祝いは初めて。
というより、8/3と9/5のどちらにも間に合わなかった失態orz

漆黒様がみんなにイジられる愛。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!