散文置き場(短編集)
後の祭りB(R18半×佐)

























「あの野郎…………」




呪うように、恨み事を口にしながら佐助はホテルの部屋に着いた。





「ズボン………これしか持ってきてないってのに………どんだけ出したんだよ」



洗面所で脱いで確認すると、ズボンにまで精液が染みていた。



「乾くかな………」



ぐっちょりと濡れた下着も脱ぎ、水洗いしようと蛇口に手を伸ばした。



「…………ん?…………電話!?」



僅かに聞こえた着信音。
慌てて洗面所を出て、ベッドに放り投げた財布の横にある携帯を手に取る。


「う………そ」



ディスプレイに表示された名前に泣きたくなった。




「……………もしもし…………」

『お疲れ』

「お、……お疲れ様です」




待っていた連絡

聞きたかった声

求めていた相手


短い言葉でも胸が熱くなる。




『そっちはもう終わったのか?』

「いや、途中で抜けて来ちゃいました」

『そうか…………俺も抜けて来たよ』

「そうなんですか」

『あぁ………お前に会いたかったからな』

「し………こく、さま………ッ」



さらりと告げられたことに
佐助は息が詰まり、一気に体温が上がる。



『お前達はどこのホテル取ったんだ?』

「え…………」

『今から行っていいだろ?』

「ぁ……………」



舞い上がっていた頭が冷静になった。

慌てて電話に出たから
下半身は靴下以外何も纏っていない。



自分の格好の恥ずかしさ

漆黒からの誘いに大きな期待

生殺しにされた刺激の余韻


理性の限界はとっくに越えている。

亀頭が持ち上がってくるのが嫌でも視界に入った。



『どうした?』

「あ…………いや…………」

『ん?』

「…………」




身体は火照り、今すぐにでも会いたい。

けれど、後ろにはまだ半蔵の吐き出したものが残っている。


慣らされたアナルから零れる精液。

こんな身体を差し出して何と言えばいいのだろうか。


佐助は歯痒くて、口惜しくて唇を噛み締めた。




「今日は………疲れてるのか、酔っ払っちゃって気持ち悪くて………」




悲しい、苦しい嘘をついた。




『大丈夫か?』

「大人しく寝てます………」

『ポカリか何か持って行こうか?』

「い、や………大丈夫です、よ」



気に掛けてくれる優しさに胸が痛む。



『…………顔だけでも見に行ったら駄目か?』

「ッ──────」



佐助は咄嗟に口を抑えた。

漆黒が甘えたことに、驚き声を上げてしまう寸前だったから。



『ん………?』

「………漆黒様………」



二つ返事が喉元まで出ようとしている。
漆黒が甘える以上に、自分が甘えたい。

会いたい、会いたい


今すぐ来て…………


ぎゅうっと胸元を掴んだ。





「今日は…………ごめんなさい」



身が裂けそうな決断を口にした。



『そうか………』

「また、帰ったら………会ってくれますか?」




求めてくれているのに応えることが出来ない。
そんな価値のない愚かな我が身を救いたくて、約束を乞う。




『時間が合えばな』

「────ッ」



甘さは微塵もない。
むしろ、社交辞令のような冷たい言葉。

身体から血の気が引いていくのが分かった。


『お前の一方通行』

半蔵に言われた台詞が頭を過ぎる。



佐助は怖くなった。


面倒臭いと思われるかもしれない。
重いかもしれない。
セフレが恋人面するなと呆れるかもしれない。


ぎゅっと胸元を掴み、真相を訊ねる。



「漆黒様って………俺とのこと、誰かに話したりしますか?」

『は!?そんな恥ずかしいことするわけないだろ!』

「は、ず………かしい………」



何かが音を立てて崩れる気がした。



『俺は誰にも話したことはないぞ』

「そうなんですね………」



やはり半蔵のカマ掛けだった。
少しでも漆黒を疑ったことで余計に気持ちが沈んだ。



『普通ノロケ話なんて恥ずかしくって出来るかよ』

「──────え?」



佐助はショックのあまり呆然としていて、漆黒の言葉がよく聞き取れなかった。



『何だ?お前は付き合ったら言いふらす派か?』

「え、ぁ、いや、あの」

『どうした?』



佐助は混乱した。

自分の一方通行、カラダだけの関係だという結論に至ったはかりなので、
漆黒が口にした『付き合う』という言葉が理解出来ない。



「俺と……漆黒様って、付き合ってるんですか?」

『違うのか?』

「いや、あ、の………」

『何だ?お前にとって俺はセフレか?』

「ち、違っ!」

『…………付き合ってるから、何度も抱きたいし、会いたいと思うだろう?』

「漆黒様………ッ!!」



佐助の身体は再び熱を帯びる。



『こんな恥ずかしいこと2度と言わんからな!』

「うん………」



佐助は目を閉じる。

優しい声を全身で聴くように
漆黒を近くに感じようと


そして、1番熱くなっている股間に手を伸ばした。



「漆黒様………次会ったら、いっぱいしたい………」

『今会えないのに煽るなよ』

「だって、俺………漆黒様が………」

『そんな声出すなよ』

「うん………」



上下に手を動かせば音が電話の向こうまで聞こえてしまうくらいに先走りでヌルヌルしている。

佐助は堪えて緩く扱くが、息が乱れる。
アナルは欲しいとねだるように収縮をして精液が流れ出る。



『まぁ、今日はゆっくり休めよ』

「はい………」

『またな』

「はい─────ッ」




何て幸福感


佐助は大きく身震いをして、
ようやく精液を吐き出した。

















「くそ………会わないって言ってんのになんつー声出すんだよ」



漆黒は通話ボタンを切った携帯を眺めながら
大きく息を吐き出した。



「十分ノロケに聞こえたけど?」

「………お前が勝手に感づいて、勝手に盗み聞きしてるだけで嘘は言っとらん」

「ズルい人だなぁ………」



腰掛けていたガードレールから立ち上がり、ゆっくりと漆黒に近づいた。



「ほら、フラれるって言ったじゃん?素直に俺とヤろうよ?」

「半蔵…………」

「久々だから燃えるよ………」



半蔵は嬉しそうに漆黒の腕に触れた。



「おい…………アイツが俺の誘いを断るなんて………お前、何したんだよ」

「んー………?」



漆黒は半蔵を睨んだが、半蔵は物ともしない。



「ちょっとしゃぶりながら後ろイジって、生殺しのまま中出ししてきた」

「はッ!?」



しれっと答えられた内容に漆黒は絶句する。



「おい、何………しゃぶって中出しって………」

「すっごい負けん気強くてさぁ、上目遣いで抵抗されたらムラッとキちゃったわけで」

「お前ッ!」



漆黒は半蔵の胸倉を掴んだ。



「何?オンナに手を出されて怒った?」



見下ろされて半蔵は冷静に笑う。



「俺が段階踏んで開発してるってのに、勝手なことを」

「…………ははっ!そんなにヤッてないってマジなんだ?」



漆黒の怒りポイントに思わず呆気に取られて声を出して笑ってしまった。



「俺でもお前のフェラはヤバイと思ってんのに、アイツには刺激が強過ぎるだろうが!」

「うっそ!?漆黒さん、ヤバイと思ってくれてんの?」



半蔵は目が輝いた。



「それに中出しって………俺は毎回ゴムしてるってのに馬鹿かお前は」

「何で!?俺ん時なんて大概ナマで中出しじゃん?」

「まだアイツは慣れてないからゴムのゼリーが必要なんだよ………」

「うわぁ………超可愛がってるし」



怒り、その対称的に歓び。
驚き、呆れ、脱力………

漆黒は半蔵から手を離し、頭を掻いた。



「あぁ〜………ロクでもねぇことしやがって………」

「まぁまぁ………ちゃんとサービスするからさぁ、佐助の分まで俺とヤろうよ?」

「…………ヤらん」

「は??」



楽しそうにしていた半蔵の笑みが固まった。



「やっぱアイツに会ってくる」

「え!何で!?」

「中出しの処理は見たいからな」

「は!?」



今度は半蔵が絶句をする番だった。



「俺が掻き出そうが自分でやろうが、恥ずかしくて泣きそうな顔が見たいんだよ」

「うわぁ………ドS〜…………あ、」




悔しくて、恥ずかしくて、
今すぐにでもイキたいと願う


そんな涙が零れ落ちそうな佐助の顔が脳裏に甦る。



「俺も見たい」

「は?」



半蔵は本音がぽろりと出た。



「うん、3人でもいいじゃん?俺も混ぜてよ」

「開発中って言ってるだろ………出来るかよ」

「少しでいいから、俺もヤリたい」

「どっちとだよ………」



何とか身体を繋げようと食い下がるが、漆黒は溜め息をつく。



「もう1度フラれたらお前の相手してやるよ」

「えー………」



既に意識はここにない漆黒は携帯を操作し始めた。



「またな」



耳元へ携帯を運びながら笑みを残し踵を返した。



「あぁ〜………ホント、ズルイ人だよ」





呼び止めることも出来ない背中を見送るのは、本日2度目。



少し構って泣かせた佐助
そして、その佐助の下へ向かう漆黒



恐らく漆黒からの連絡はないだろう。




「はぁ…………ヤリてぇ…………」



興味本位で手を出せなければ良かったのだろうか。

大人しく待てば良かったのだろうか。


解ることはただ1つ


今、どんなことを考えても既に手遅れだということだ。




火照る身体は行き場がない







後の祭り─────


















12.05.20
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前作からどれだけ経ったでしょうか。
言葉選びやキャラの性格がブレてる。

しかし、ドSな半蔵さんの上を行く漆黒様が書けて満足。

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