散文置き場(短編集)
仕方ないじゃん(W政宗)
「なぁ、ここに置いといた儂の面頬知らんか?」
おもてなしの時刻間際の詰め所にて、
漆黒は所有物を見失っていた。
「今日は寒いから、カイロの上に乗せて温めて置いたんだが………」
「漆黒様の?儂は触ってませんが」
「儂も存じません」
カイロのみが残されている。
「あぁ〜………そういえばさっき、政宗様がニヤニヤしながら冷蔵庫を覗いてましたね」
「おい、まさか………!」
慌てて小さな冷蔵庫を開けてみると
「あの野郎………」
ペットボトルと並んで冷やされている面頬があった。
「あらまー………鮮度が保たれてますねぇ」
「小十郎………今の儂は笑えんぞ」
「失礼しました」
可愛げのない悪戯に漆黒は怒りを感じていた。
「ククッ………」
「あ!政宗!お前ッ」
笑いが堪えられなかった政宗が出入口に立っていた。
「馬鹿かお前は!もうじき出番だというのにこんなキンキンに冷やしおって」
「お前が大事そうに温めているから、魔が差した」
「笑い事じゃないぞ?どんだけ冷たいか着けてみろ」
漆黒は面頬を差し出しながら政宗に近寄る。
「それを着けたら、お前と間接キスになるだろう」
「口は付けとらんわ!腹でもいいから出せ!」
「やだよ!」
「おい、待たんかッ」
怒りの収まらない漆黒は、逃げ出した政宗を追い掛けた。
「ぬおぉぉぁぁぁ………………」
しばらくして聴こえてきたのは大絶叫。
「今のって………」
「あぁ………返り討ちにされたな」
「あの人は何で挑んじゃうかなぁ………」
残った従者達は、毎度報われない漆黒に合掌した。
11.12.22
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冬の一コマ。
我が子のように可愛がる漆黒様。
好きな子にはイタズラしたくなる政宗様。
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