Ss
だって腹が立つ(佐+政)




















電子音が部屋に響く。

特定の人間からの着信を報せる音だ。






「…………」



液晶画面に表示される名前に眉をひそめる。

しかし

なかなか途切れない電話に諦めて、通話ボタンを押した。





「…………はい」

『あ、もしもーし♪伊達ちゃん?俺だけどさ、今ヒマ?』



能天気な明るい声が、脳細胞を酷く突き刺す。



「ヒマじゃねぇ」

『えーホント?じゃあ、今何してんの?』

「別に」

『別にって、ヒマしてるってことでしょ?ねぇ、今から家行ってもいい?』



にこにこと笑う顔が安易に想像出来て、左耳から入ってくる声に怒りさえ覚えた。



「ヒマじゃねぇって」

『何で?用が特にないならいいでしょ?』

「よくねぇ」



面倒臭い・ゆっくりしたい

そんな気分じゃない…………


こちら側の都合無視な押しの強さにうんざりする。



『何がダメなの?』

「…………今は会いたくねぇ」

『何で?』

「何だっていいだろ、しつこい」

『ふぅん…………』



急に明るい声に影が差す。



『じゃあいいや、チカちゃんか慶次のトコ行こうっと』

「は?ちょ、何だよそれ」

『じゃ、伊達ちゃんバイバーイ』

「ちょ、待てっ!それって誰でもいいってこと……おい佐助ッ」




ツー、ツー、ツー…………




一方的な会話で、一方的な終了。



「な…………んだよそれッ!」



怒りという感情で体温が一気に上がり、
着信履歴から一方的な電話番号を選択して通話ボタンを押した。



「くそっ」



コール音はするのに繋がらないもどかしさ。

心を掻き乱されて余計に苛立ち、
テーブルに置いてある財布と鍵を荒っぽく掴み、玄関を目指す。


その間もコール音は続いたまま。





ガチャッ────





ドアを勢いよく開けると




「おま、────」




見慣れた明るい髪が目に入る。



「何?」



佐助はバイブで揺れる携帯を握ったまま、通路の壁に寄り掛かって立っていた。



「…………べ、つに…………」



ばつが悪そうに携帯の発信を止める。



「…………」



何か言われるわけでもなく、居心地悪く頭を掻いた。



「何で…………いるんだよ」

「今から行ってもいい?って聞いたじゃん?伊達ちゃんどっか出掛けるの?」

「…………煙草…………買いに行くけど、お前も来るか?」

「いいよ」



苦しい言い訳だと分かっていても、
自分から答えることも、
質問されたとしても、

本音は口にはしたくない。









「このままデートする?」

「しねぇ」

「じゃあ、飲み物やお菓子買って家でまったりする?」

「しねぇ」

「手繋ぐ?」

「死ね!」




照れ隠しなのか、鬱陶しいのか




「抱き締めていい?」

「よくねぇッ」

「キスしたい」

「嫌だ!」

「エッチしよう」

「馬鹿じゃねぇの!」




後ろから見ていても分かるくらいに顔が赤い。


怒りなのか、羞恥なのか





「ねぇ…………こっち向いてよ」

「誰が向くか!」

「伊達ちゃん、可愛い」

「ふざけん────なッ!?」



腕を引っ張られ、身体を反転させられた。



「俺様本気だけど」

「────ッ」




普段は飄々としているのに

時折見せる真剣な眼差し。



だからなのか、



その言葉に、態度に振り回されて苛々するのに


何故か、何故か…………




「好きだよ」

「…………」




その瞳に吸い込まれるように




「家、戻ろ?」

「…………」




嫌とは言えず、素直に手を引かれ進んできた道を戻っていく。




手のひらで踊らされるような



そんな己に腹が立つ。

腹が立つ、腹が立つのに



この手の温もりは悪くない。














11.08.28
××××××××××××××××××

ツンデレっ子炸裂
何が書きたいのか見失った。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!