懐古と衝撃 2
「───…………変わってないな………」
大きな門の前で車が停まり、政宗は車を降りて感嘆の溜め息を漏らした。
「イイ顔してるよ………政宗」
「そう?」
「あぁ………本当に、おかえり」
「ただいま………」
車越しに佐助と政宗は微笑み合った。
「若頭ー!おかえんなさい!車回しときますね!」
「おぉ………よろしく」
「はーい」
若い男に車を任せて2人は門に近づいた。
「……………緊張してる?」
「まぁ少しは………」
きっちりネクタイは締め直した政宗の表情は幾分堅かった。
「15年振りだし………」
「俺もムショ出た時は浦島太郎状態だったなぁ〜………まぁ、入りなよ」
「あぁ………」
佐助は通用口を開けて政宗を手招きした。
「ッ────!?」
政宗は一歩敷居を跨いで息を飲んだ。
ザワザワ─────
そこには人垣が広がっていた。
「おーい!お前等集まり過ぎー!」
「だってー………」
「うぉ!竜だ!竜!」
「かっきー………」
佐助もさすがに予想を上回る数の好奇の目に苦笑いが出た。
「ククッ………こういうとこは変わってねぇんだな」
昔から単細胞な集まりだったのを思い出して、政宗は笑ってしまう。
「あぁ〜………伊達政宗だ………よろしく」
「伊達さんいくつなんですか!」
「全然ひょろいじゃん」
「めっちゃ美人〜!」
「ホントに伝説の竜?」
賛否両論で騒がしい外野に囲まれて政宗は圧倒されていた。
「お前等散れー!ほらー!見物終わり!」
「えー………新人は弄りたいじゃないっすかぁ」
「新人って言っても幹部クラスだからな!」
「えッ────!!?」
佐助の口から出た言葉は、政宗を含めてその場にいる者を絶句させた。
「今………何て………」
「政宗殿ーッ!!!」
「!?」
その凍った空気を打ち破ったのは幸村の登場だ。
「政宗殿!!大変お久し振りでございます!!」
「幸村ぁ…………」
駆け寄ってきた幸村の姿に、政宗の顔は綻ぶ。
「あぁ………政宗殿!まさか再会出来るとは思いもしなかったので、この幸村!喜びを言葉に表わせませぬ!」
「はは!俺も嬉しいぜ………子供だったお前が随分育ったなぁ」
再会を懐かしむ2人の姿に佐助も心が和んだ。
「政宗殿はあの頃もお美しかったけれど、ますます魅力的になられて……」
幸村は頬を赤らめてもじもじと落ち着きがなかった。
「ククッ………暑苦しいとこは変わってないだろ?ほら………」
「ま………さむね殿………!!」
政宗は両腕を軽く広げたので、幸村は鼻の奥がツーンとした。
「本当にお会いしとうございました………」
「泣くな馬鹿………」
ぎゅうっと抱きつき、声の震える幸村の背中を撫でながら、政宗も目頭が熱くなるのを感じた。
「つむじが見えてたお前に背を越されるとはな………」
「政宗殿がとても華奢に感じます」
幸村は政宗の肩口に顔をすり寄せた。
「………でかくなったのに、中身は相変わらずだな………」
幸村は鬱陶しいくらいにべったりだったので、年月が経っても政宗は昔通りに、幸村を甘やかしてスキンシップを許したのだ。
外野は当然どよめいた。
出戻りなのに幹部候補で、
次期組長候補の幸村が心を許すような政宗の存在と、幸村の甘えた行動に驚きが隠せないから。
そんな2人を微笑ましく見つめる佐助の目の色が一瞬変わったのを、慶次は見落とさなかった──────
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