乾杯と胸板 13





















変わらない場所に

変わらない顔があった









「政宗様!?」




驚きの表情を見せながらも駆け寄って来た男は、政宗の両腕をがっちり掴んだ。



「本物だよな!?見違える程大きくなって!」

「ククッ………どこの親戚だよ」



再会をオーバーに喜ぶ男に自然と政宗も釣られて嬉しくなり、笑みが零れてしまう。



「さぁ中へ!」

「あぁ」

「片倉さんも驚くよ!」

「………………あぁ」




ここに来た理由である会いたい人物の名を聞いて、政宗の凝り固まった心がトクンと動いた………






「おい、お前等!スペシャルゲストだぜ!」



一歩足を踏み入れると、柄の悪い輩ばかりだが、どれも見知った顔がそこにあった。



「嘘!?もしかして政宗様じゃね?」
「生きてたんだ!」
「この眼帯は本人だよな!」
「俺、片倉さん呼んでくるよ!」
「突然いなくなるから淋しかったぜ!」
「ちょ、苦し、」
「随分大人びたなー!」
「また会えるとは思ってなかったよ」



政宗は囲まれてもみくちゃにされて苦笑いが出るものの、大いに喜ぶ連中同様に嬉しかった。





「へぇ………本当に久しい顔だな」

「…………小十郎…………」





淋しくて心苦しくて、1人ではいられなくて衝動的に訪ねた人物。

強面ながらも柔らかいと感じる笑顔を向けられて、政宗は目頭が熱くなった。



「……………奥に上がれよ」

「…………ん」

「店の方は暫く頼んだぞ」

「へいッ」





ここは料亭というほど格式の高さは感じられないが、品のある料理屋。


座敷へと通された政宗は、畳に触れながら心の内を探っていたが、

ここへ来るまでの孤独感や妬み、猜疑心など微塵にしか残っていないと気付いた。



「不思議だな…………」



規則的に並ぶ畳の目を見つめながら思わず口元が緩んでしまう。





「──────」




座敷に近づく足音が聞こえて政宗は顔を上げた。



「飲むだろ?」

「あぁ………貰うよ」



カランと響きのいい音を立てて瓶ビールとグラスを持って小十郎は現れた。



「最近の武田組が浮き足立って『伝説の竜』と口にしていたがお前だったか」

「別に伝説じゃねぇよ」

「ほらよ…………」



小十郎はビールを注いだグラスを政宗に差し出す。



「お前が生きていて再会が出来た事に………」

「あぁ…………」



互いのグラスを当て、喜びの乾杯。



「…………はぁ…………」
「うめぇな…………」

「ッ─────」




一気に飲み干してグラスをテーブルに置くと同時、




「生きていて………本当に良かった…………」

「小じゅ……………」



小十郎は政宗を胸へと抱き寄せた。




「……………」




厚い胸板から聞こえる規則正しい鼓動

力強い腕から伝わる温もりと安心感


一度は堪えたものが込み上がり、鼻の奥がツンと痛む。



「撃たれた後、お前は消えた…………死んだもんと思ってたぜ」

「あぁ…………」

「馬鹿野郎………」

「…………うん………」



抱き締める力が一層強くなり、政宗は顔を埋めた胸を涙で湿らせた。




「それで、何があった……………猿飛と…………」

「──────」




名前が出た途端、背中へと回そうとした政宗の手が止まる。




「…………昔からお前が俺を訪ねる理由は、奴絡みだっただろう?」




昔から……………




心を痛めた回数は数知れず

堪えた涙の量は計り知れず

流した涙は、本人知らず──────














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