無言と敵対 7


















「悪い………」



肩を貸している男に政宗は小さく呟いた。



「別に………上司の命令だし」



政宗の体を支える男、慶次は前を向いたまま不機嫌そうな声で返事をした。


若い衆は車の鍵を渡す時、何か言いたそうにして政宗を好奇な目で見ていたが、慶次の無言の威圧で何事もなく車へ辿り着いた。



「…………俺、横に座るよ」



後部座席を開けようとした慶次を制するが、慶次は「何故」といった顔をした。



「ミラーでちらちら確認されるのって鬱陶しいからさ」

「…………あ、そう………」



横に座る人間は観察しづらいと、政宗は直球で先手を打ったのだ。
慶次は言い方にカチンとしながらも、実際その通りなので何も言わず横に座らせた。


そして車はナビの指す方向へと走り出す…………




「…………変わったよな………」



窓の外を眺める政宗がぽつりと漏らす。

街並みが?
組が?
人が?
状況が?


何についての感想なのか慶次は問うことを止めた。



15年という歳月の大きさに、政宗は鼻の奥がつーんと痛むのを感じながら流れる景色を見続けた………










────────


「ここか…………」



着いたのは至って普通の二階建アパート。
間取りも普通の1LDK。

政宗が前もって送った身の回り品が入った段ボールが幾つかと、
テレビ・冷蔵庫・ソファー・テーブルが既に設置してあった。
恐らく寝室にはベッド、洗面所には洗濯機があるだろう。



「こんなしっかり用意してくれたんだ………」

「ッ…………」



部屋を見渡した政宗の一言で慶次は悟った。


佐助のマンションは洒落ている。
室内も当然。身の回り全てに気が配られている。

だからこそ慶次は、佐助の用意したこの部屋に違和感を抱いたのだ。


そう…………


ここは仮の住まい。
他の組員の目もあるから表向きに用意された場所。

もしくは今回のように顔を合わせづらい時、1人になるために使う場所。


本当は佐助のマンションに同棲をするのだろう。
だからここはどんな場所でも構わないのだろう。



恋人同士の2人ならば当然のことなのだが、
目の当たりにした慶次は腹の底から込み上がる嫉妬心に目眩がした。




「ありがとう………助かった」



よろめきながらも壁に手をついて、慶次の体から離れて政宗は靴を脱いだ。



「…………何なんだよ………」

「え?」

「あんた、佐助さんの何だって言うんだよ!!」

「やめ………!痛ッ」



抑えきれない感情をぶつけ、慶次は政宗を床に倒した。



「なぁ………佐助さんを離さないのは、この身体なのか!?」

「よせッ!!」

「あんたじゃなきゃならない理由って何なんだよ!」




服が引き裂かれる音が、まだ生活感のない部屋に響いた──────









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