尊敬と羨望  12
慶次独白・過去編?

















俺は前田慶次。




雨の中、車で待つのは二度目のことだ。



長いこと暇で昔を思い出していた─────






武田組に厄介になって8年。

その内、若頭の佐助さんの下について5年…………


夜の街を遊び歩いて、用心棒みたいなことをしていたら

虎のおやっさんに拾われた。



組に入った頃は、組長と息子の幸村の暑苦しさに苦笑いばかりだった………
(最近までもそうか?)

誰が止めるの?って感じ。


まぁ…………若頭がセーブ役で、まとめ役で、お母さん役だから不在の間は大変で。




相手は頭を撃ち抜かれて即死。

撃たれたうちの組員は所在不明。


生死すら分からないそいつのことを幸村が熱く語るが、凄い人だったんだってよ。

その麗しの政宗殿(幸村談)が身代わりに撃たれて、若頭が仇をとった。


義理人情でいいじゃないかと思えるけど、


誰もが頼りにしている立場の人で、冷静沈着な切れ者(時々オカン)………


そんな人が何故…………



俺はその時は理解出来なかった…………





そして、佐助さんの出所日が決まって、俺は付き人を任命された。


初対面の印象は………


25歳の若さで武田組の若頭に大抜擢された人の割に、
物腰が柔らかくて、飄々としていて驚いた。



でも………



暗い影を潜めていて、とても悲しい瞳をしていたのは強く憶えている………



人を殺めるって、闇を背負う重大なことなんだなって思ってた。


(まぁ………実際は違ったけどね)




『その場で死んだのはあれが初めてだが、時間が来れば死ぬように手を下すのは基本だろ?』




致命傷を与えて死のカウントダウン………
即死よりタチが悪い。


そうやって何人手にかけたのか分からない佐助さんの一言に


初めて恐怖を感じた。






けれどやっぱり佐助さんは若頭なだけあって、凄い人だった。


組員への気の配り方、組長の補佐、幸村の世話………

何でも完璧にこなしていて、男の俺から見ても格好良かった。


でも、時折見せる淋しげな表情………



無意識なのか、ネックレスを触りながらどこか遠くを眺めている。


失恋より、もっと深い心の傷があるような………


佐助さんの色恋沙汰はよく知らないけど、

言い寄ってくる女は多いんだから、恋でもして楽しめばいいと思う。




恋とか……………



………恋……………




そう………、俺は恋をした。




組長が佐助さんに告げた一言

『政宗は生きている』



それを聞いた佐助さんは取り乱した。


(今でも信じらんねぇ………)



あの佐助さんが声を荒げて、冷静さを見失い、


泣き崩れた…………



落ち着かせようと何度も名前を呼んだ。


俺にしがみつきながら涙を流す姿は、人間味溢れていて、庇護欲を駆り立てられた………



あの瞬間、俺は恋に落ち



愛しい気持ちと

妬む気持ちを生み出した。



その後、血相を変えて部下達に指示を出す姿………


見たことのない、射ぬくような強い光を灯した瞳に、背筋がゾクゾクした。




俺は、殺されてもいい………

なんて思う程に、鬼気迫るその姿に欲情した。






とても強くて、眉目秀麗な政宗殿(幸村談)



あんたの存在は目障りだ。



俺は佐助さんが欲しい。



なのに、何も出来ない自分が悔しい…………




店には2人の姿が見えない。



きっと今頃…………



悔しいけれど、

虚しいけれど、



佐助さんが今頃セックスしてるのかと考えたら



堪らなく興奮した…………


俺も貴方に抱かれ、


貴方を




抱きたい───────









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