涙雨と恋心  11


















慶次は雨の中、車内で上司の戻りを待っていた…………





雨の日にここへ来るのは二度目だ。






一度目はどこに行くのか分からずに運転をした。


あの日が重なって思い出される────…………















口数が少なく顔色の悪い上司に、不安で何も聞けなかった。




渡された住所をナビ検索して、着いた場所は小さなコーヒーショップ。




「少し待ってろ」



そう言って店内へ………





雨の日は暇なのか
店には店員が1人いるだけ………




雨粒が邪魔で、中の様子がよく見えない……



でも、


わざわざこんな所まで、会いに来るということは………






慶次は推測をして

気が滅入った。




しかし何故こんな時期に………?

組長が撃たれて、内外部でも緊迫した毎日だというのに


何故、今組を離れてここに来たのか………





もしかしたら仮説が違うのかもしれない。


組に関わる重要人物なのかもしれない。




「きっと違う………あの男じゃない………」




慶次は僅かな希望を持って、どんよりと曇った空を見つめていた。










「………待たせた」

「ぁ…………」




思ったより早い戻りで気付くのが遅れた。




「………早かった………ですね……」

「あぁ……………」




ルームミラーに映る上司の顔色は、来る時と同じで悪かった。

心配で声を掛けようと振り向く。






「…………さす────ッ!!」




後部座席に座る上司は目元を隠しているが、ポタポタと頬を伝い落ちる雫………




「…………車出せ………」

「あ、はい」




慶次は息の詰まる気持ちだった。





嬉しいのか

悲しいのか



涙の意味は分からない………



しかし、慶次の予想通りに、上司が血眼になって探し出した相手であるということは確かだった。



だから………




慶次の胸は痛むのだ。




上司の………

佐助の涙を見るのは、これで二度目。




一度目も『あの男』絡み………



その時佐助の涙を見て、

伝説の竜と呼ばれる男に、チリチリと嫉妬の炎が燻るのを初めて感じた。




そして





『俺はこの人に恋をしている』





そう初めて気付いたのもその時だった。






二度目の涙も

一度目の雨の訪問も



慶次の心を暗く曇らせた。




あの時、佐助の初めての涙を見なければ



こんなに苦しい想いをしなかったかもしれない。





男の涙に惹かれるなんて、どうかしていると思いながらも






静かに涙を流す佐助が、愛しかった────────








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