抵抗と強引 9
「やッ………痛っ」
店の奥にはコーヒー豆を置く棚と、小さな休憩スペースがある。
佐助は強い力で政宗の腕を掴んだまま引っ張り入れた。
「ぐっ…………」
政宗は壁に体を押しつけられて、小さく呻いた。
「………こんな眼鏡はやめろと言っただろ?」
カシャン────
眼鏡が床に落ちる音は、政宗の恐怖を増長させた。
「ほらみろ…………あの頃と変わらない瞳だ………」
互いの瞳に映り込むくらいの距離。
吐息が触れる…………
「思い出せ………政宗………お前にとって俺が何なのか」
「ぃ………や………───ッ」
目を瞑り顔を逸らした政宗は、強引に唇を奪われた。
あの頃のように………
人目を盗み、ほんの僅かな時間での濃厚なキス。
普段はクールな佐助が見せる情熱的な姿で、息が出来ないようなこのキスが、政宗は好きだった………
「────ハァッ………ハァ」
「…………政宗………」
熱の籠もった声で呼ばないで
忘れられない記憶が
忘れたふりをした記憶が
蓋を開けてしまう────
「アッ!」
佐助は政宗のシャツを力任せに脱がした。
弾き飛んだボタンがコツンコツンと床に転がる。
「………ちゃんと鍛えてあるじゃないか………」
30歳を越えたにしては、無駄な肉もなく引き締まった身体に、佐助は目を細めた。
「…………この傷か………」
「ッ…………」
左脇腹にある弾痕にそっと触れた。
「俺の知らない傷………だが………」
「痛ッ………」
政宗は体を反転させられて壁に抑えつけられる。
「あの頃と何も変わってない竜…………」
佐助はじっくりと政宗の刺青を見つめた。
「お前は肌が白いから発色が鮮やかだよな………」
「ぁ……………」
背中の竜を撫でる指先に身震いしてしまう。
「アッ!」
「政宗………ッ!」
佐助は政宗を背後から抱き締めて、首筋に噛り付きながらズボンを脱がそうとした。
「や………だっ!佐助さんッ」
「止めないよ…………」
「アァッ!」
耳たぶを甘噛みしたり、ぎゅっと乳首を摘んだり、下着の中に手を入れたり………
佐助の愛撫に何も抵抗が出来ないが、政宗は目を閉じて現実を受け入れないよう無駄な足掻きをした。
「政宗…………悪い………」
「ぇ………────ッ!?」
視界はぐるりと回り、背中に痛むような冷たさを感じたので、政宗は床に倒されたと理解した。
「………久々でも俺………優しくしないからね」
政宗の身動きを封じて馬乗りになった佐助は、上着とシャツを脱いだ。
「ぁ…………」
佐助の身体もしっかり鍛えられていて、政宗は見惚れてしまい赤くなったが、ある物に目が止まった。
チャラ─────
それは佐助の首に下がるドックタグのネックレス………
あの頃、2人で揃いでつけていた物だった。
「政宗……………」
「さ………すけ………さ……ん」
自然と上がる体温。
流されていく感情。
もう何も考えられない、といった感じで
眼の縁を朱に染めて潤んだ表情の政宗。
佐助は吸い寄せられるように政宗に覆い被さった──────
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