喪失と消失 7
「…………政宗………」
長い沈黙を破ったのは佐助だった。
「………はい…………」
名前を呼ぶ声が弱々しく、胸が痛んだ。
「俺は……………お前を二度も失わなければならないのか?」
「…………」
佐助は顔を伏せたまま、ゆっくりと口を開いた。
空白の15年間に少しずつ色がついていく…………
──────
刑務所に入ってから、懺悔をしない時間がないくらいに己の行動を悔いた。
頭が真っ白になったとはいえ、軽はずみな行動だった。
身代わりに撃たれたり組員の仇を取るのは当然だが、
若頭という立場の自分が手を下してはならなかった。
後先考えずに突っ走った結果、
組長を補佐することも、家族同然の組員達の統率も、守ることも出来なくなった………。
私情を優先にして、家族を見捨てたのと同じことだ。
悔いても悔いきれない。
そして何より…………
大切にしていた「アイツ」を守れなかったこと、
守れなかったにしても、その後そばにいてやること、
何一つも出来ない己の未熟さを悔いた……………
「大将………本当にごめんね」
「気に病むな………こちらのことは心配するでない」
「ん…………」
「だから、お前はここを1日でも早く出るようしっかり励むのだぞ!」
「分かった………」
ガラスを挟んでの面会。
信玄の目には佐助の笑顔が痛々しく映った。
「………口煩いお前がおらぬから、皆は自主的に真面目にやっておるぞ………まぁ伸びやかな部分もあるがのぉ」
「ははは…………目に浮かぶよ…………みんなは元気?」
「あぁ………うちに覇気のない者はおらぬぞ」
「……………政宗は?」
「………あぁ………元気に決まっておろう」
初めのうちは信玄のその言葉を疑うことはなかった。
傷が癒えないからだろう。
リハビリもあるだろうから。
そう信じて政宗が面会に来ることを待ち続けた。
だが、
政宗が現れることはなかった…………
考えたくなかった仮説は、確信へと変わる。
あの時、血の海で青白い顔の政宗を抱き締めたのが最期なのだろう………
もっと強く、もっと長く、もっと2人で
愛し合いたかった…………
手放したくない大切な者を亡くしたのは自分の罪だ。
生きる気力といえば、
ここから出て墓前に手を合わせる、と考えること。
それが一番の償いであり、
最後の愛情表現だから…………
陳腐な言葉しか思い浮かばないけれど、
政宗を、愛していたんだ─────
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