余裕と本音  5
過去編

















「…………やっぱり待ってたね」

「ん…………」





信玄の部屋を後にして、政宗が廊下に立っている姿を見つけて、佐助は思わず顔が弛んでしまう。





「ちゃんと反省したかー?」

「…………」

「………その顔は反省してないな!コノヤロー」




佐助は膨れた政宗の頬を摘んだ。




「…………」

「ん〜?どーした?」



いつもなら暴れるような政宗だったが、摘まれたまま佐助を見つめた。




「…………俺ってさ………」

「ん?」




政宗の口は重い。





「………身体だけか………?」

「…………」




短気な政宗とは思えないような弱気な発言だった。



佐助も政宗を見つめたまま、指を離した。




「お馬鹿さん………」

「ッ…………」




佐助は政宗の頭を自分の胸へと引き寄せた。




「身体だけだったら、服脱がして首輪付けて縛り付けてるよ………」

「変態………」




佐助の鼓動を聞きながら安心するように政宗は目を閉じた。




「身体だけじゃないし………俺だけだよ………ちゃんと守るから噂なんか気にするな………」

「ん…………」





噂は真実ではないが、嘘とも言えない事実があったのだ………





(どうしよ…………キスしたい………)



今でも十分に見られてはならない状況なのだが、佐助は葛藤した。




「夜さ………家に来いよ………」

「………やだよ変態」

「テ………メ……ッ」




しおらしくて可愛げがあると思ったのも束の間。


政宗はするりと佐助の腕から抜け出した。



「流れからしたらそこは二つ返事だろ〜?」

「幸村は今日部活ないから、これから迎え行ってくるよ」

「あーはいはい、話聞かないし!中学生相手に浮気すんなよ」

「………佐助さんより年の差少ないよなぁ〜………」

「とっとと行ってこい!」



政宗はイタズラな笑みを残して去っていった。






「あの小悪魔め…………」




佐助は、自分と歳の離れた政宗にペースを乱されてしまうことに、
悪い気はしないが情けないな、と思い溜め息をついた。







「………いつも余裕かましやがって………キスの1つくらいしろよ………」




一方、政宗は唇を尖らせながら、先程まで佐助に触れられていた髪を、名残惜しそうに撫でた。









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