条件と伝説  3
















「旦那〜………少し出てくるから、ちょっとよろしく」

「あぁ………」

「どうしたの?神妙な顔して」

「本当に俺が跡を継げるのだろうか………」




幸村は革張りのソファに体をしっかり預けて、天井を見上げた。




「やはりお前か、お館様の実子であられる勝頼殿の方が適しているのではないか?」

「旦那だって立派な大将の息子だよ………分家の姓のままだけど、ちゃんと養子入りしてるじゃないか」

「しかし………」

「勝頼さんは企業家だ………こっちの世界は疎いことが多い………その点旦那は俺様が小さい頃から英才教育してるから器はあるよ」



佐助は幸村の隣に腰掛けて、子供をあやすように頭を撫でた。




「俺はまだ30歳の若輩だ………やはり適任はお前では………」

「………俺は私情で動いて長い間組を留守にして迷惑をかけた………俺はそれを償いたいんだ………」




佐助はソファの背もたれに身を任せる。




「俺がいない間………組をしっかり守ってくれたのは旦那だったし、俺は今まで通り旦那のフォローで十分だよ」

「しかし………」

「……………俺は旦那以上に頑固だから」




佐助はにっこりと笑って煙草を取り出した。


幸村は、自分の前では佐助が煙草を吸わないことを知っているので、これ以上話しても無駄だと悟った。




「…………政宗殿の所へ行くのか?」

「…………まぁ………ね……」



佐助は煙草をくわえたまま、火を点けずに立ち上がった。





「身に余る思いだが、跡を継ぐことは受けよう…………但し、政宗殿が戻られるのであれば、その身を俺が預かるというのが条件だ」

「…………」

「知っての通り、俺は頑固だからな」

「ははは…………行ってくるよ………」




今度こそ佐助は火を点けて部屋を出た。





「………いっちょ前に男のツラしやがって………」




佐助は苦笑いしながら煙を吐き出した。





「慶次出るぞ………車回せ」

「…………」




部屋の前で待っていた慶次は顔を上げない。




「どうした………」




自分より大柄な男が背中を丸くしているのだから、佐助は異変に気付いた。




「また………こないだのトコに行くんすか………?」

「…………あぁ」

「言わせてもらいたいんすけど………佐助さんも幸村も………何でアイツに執着するんですか?」

「…………」

「伝説の竜だか何だか知らないけど、幸村が大袈裟だったり佐助さんが必死に探したりしたから話に尾ヒレついたんじゃないんですか?」




佐助は黙って慶次の言い分を聞いた。




「こないだチラっとしか見てないけど、細くて覇気ないし、強そうに思えなかったし、それなのに何で………」




慶次は拳を固く握り締めた。




「佐助さんが出てきてからずっと世話役やらせてもらえて、せっかく………一番の舎弟になれたのに………」

「お前………俺がいない頃に組に入ったんだよな………」

「もう8年になります………」



慶次は腹に抱えていた気持ちをぶつけてから、ポケット灰皿を佐助に差し出した。



「アイツが抜けて7年…………そりゃ風化もしちゃうか〜………」




佐助は遠い目をしながら笑った。




「伝説って呼ぶのは大袈裟じゃないよ………」

「でも!昔は凄かったかもしれないけど、今は組抜けて15年も過ぎたオヤジじゃん!買い被り過ぎでしょ!?」

「……………俺も10年は組から離れてたオヤジだぜ?買い被るなよ」

「いや、佐助さんは違うッ!実際すげぇ人だぜ!」

「同じ事だ………知らない奴が俺に意見をするな」

「ッ────…………す……んません………」




佐助の冷たく鋭い視線に慶次は背筋がゾクッとした。




「あと…………お前と旦那が仲いいのは知ってるけど、旦那の立場は変わるんだ………呼び方には気を付けろよ」

「はい…………」




佐助は一人歩き始めた。


慶次はその背中を見つめ、



「うわぁん!佐助さん!もっと叱ってー!」

「重ッ!!」

「伝説なんかより俺のこと見てよー!」




慶次は佐助の背中に飛び掛かり、騒ぎ続けた…………











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