太陽と月の距離
緊張












「はぁ……」




幸村は待ち合わせ場所に、待ち合わせ時間の4時間前から立ち続けた。




(某……おかしくないだろうか?)



何度目になるか分からない服装チェックをした。



無地のTシャツに、佐助が買ってくれたお気に入りのチェック柄のシャツを羽織り、仕事用ではないジーンズを穿き、勝負靴である赤いコンバースのスニーカーを履いていた。



至って普通の若者の格好なのだが、オシャレに疎い幸村にとっては頑張った方なのだ。




「ふぅ〜………」



待ち合わせ時刻が近づいてくるにあたって、幸村はソワソワ・キョロキョロとしていた。






「Hey!真田幸村ッ」

「ぬぉ!?」



幸村は背後からの声に思わず身構えてしまった。



「Yo〜」

「まっ……政宗殿……!」



振り返るとそこには待ち焦がれた人物が立っていて、嬉しさのあまり腰が砕けた。




「ククッ……ちょっと見てたけど……お前相当変な奴だな」

「いっ……いつから!?気付きませんでしたぁ!」



動揺と眩しい笑顔に思わず赤面して顔を両手で覆った。



「ハハッ!本当に変な奴だな」



楽しそうに笑う政宗に釣られて幸村も笑顔になったが複雑な表情だった。



「別に緊張することねぇだろ?デートじゃあるまいし」

「ででででーと!?破廉恥なぁ!!」



幸村はまたしても真っ赤になって顔を覆った。



「クククッ……落ち着きねぇなぁ〜……ほら行こうぜ?」

「あっ、は………い…」

「どうした?」



幸村は歩みを進めようとした政宗を見て目を丸くした。





「政宗殿が………とても格好良くて……」

「そうか?Thanks」




政宗はグレーのジャケットに濃紺のインナー、黒い細身のパンツといったシンプルで大人な格好だったのだ。



「某はこんな格好で……」

「俺に畏縮する必要ねぇだろ?気ぃ使われても疲れるぜ」

「すみませぬ………」




しょぼんと垂れ下がった犬の耳が見えそうな幸村に政宗は笑った。




「ハハッ……それ、お前らしくて似合ってるぜ?」

「えっ!」

「俺は好きだぜ」

「……ッ!!」



政宗はニィと笑い、踵を返したので幸村は照れて半笑いで赤くなった顔を見られずに済んだ。


















─────

「お前って変わってるよなぁ〜」

「そればかりでござるな」

「誘っておいてノープランってある意味凄ぇよ」

「ぅ……」




二人は洋食屋にいた。



無計画な幸村をリードして、楽しそうに意地悪を言う政宗が連れてきたのだ。





「お前ってさ、彼女いたことねぇだろ?」

「そっ某はッ……お付き合いなど……」

「また赤くなっておもしれぇ〜」

「からかわないで下されッ」



クスクスと笑われて拗ねた幸村だった。



「今まで見たことねぇ人種だからお前楽しいぜ」

「それは……褒め言葉なんでしょうか?」

「さぁな………」

「ッ……!」




出会った時と同じ、人を挑発するような不敵な笑みに下腹部がズクンと疼いた。




(い……いかん……政宗殿に……)









幸村は欲情した────
















×××××××××××××××

オマケ



「オムライスってお前ッ!」

「なっ、何かおかしいでござるか??」

「クククッ……」




純な幸村の注文がツボに入ったようで肩を揺らして政宗は笑った。




期待を裏切らない天然男、
真田幸村───

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