太陽と月の距離
砂出し
「あぅ〜………」
幸村は署のデスクに倒れ込んでいた。
「おぅ幸村〜!調書取りは順調か〜?」
「慶次殿………」
「お前みてぇな単細胞はデスクワークには向かねぇよな!」
容疑者と取調室でなかなか進まない調書取りを数時間続けていて、幸村は慶次に背中をバシバシ叩かれたが反応出来ずにいた。
「口を割らんのです……」
「まぁ……ヤクの所持者なんてそんなもんだよ」
数日前、万引きで逮捕した男の所持品に大麻があり、根気よく入手ルートを聞き出そうとしていた。
「あぅ〜…………」
「幸村さん大丈夫ですか?」
仕事を終えて佐助の店に来てもカウンターにうつ伏していた。
「はぁ………どうしたら話してくれるのだろうか……」
「自白かぁ……」
佐助は料理をしながら考え事をした。
「旦那はさ、吐け吐けって騒いで追い詰めてるでしょ?」
「う、うむ」
「押してダメなら引いてみなさい?」
「………」
「大体犯罪者なんて人に反発した奴等なんだからさ」
佐助は出来上がった料理を並べた。
「このアサリだって静かに放っておけば砂を吐いてくれるでしょ?」
「なるほどな………」
幸村は出されたアサリの味噌汁をジーッと眺めた。
──────
「今日は幸村の奴……どうしたんだ?」
慶次は別室で取り調べをモニタリングをしていたが、幸村の変化に驚いていた。
「何だよ……今日は黙ってよ……」
「…………」
「チッ………」
真っ直ぐな瞳を向ける無言の幸村に居心地悪さを感じていた。
「落ちたな────」
慶次はニヤリと笑ってモニター室を後にした。
───────
「浅井部長殿!!真田幸村これより歌舞伎町へ麻薬売人の確保に行って参ります!」
「よし!悪は即刻削除しろ!」
「御意!!」
「あははっ……」
慶次は熱血な上司と部下のやり取りに渇いた笑いが出てしまった。
「前田慶次!お前もすぐに行かぬか!!」
「はいはい……っと〜」
苦笑いをしながらも部屋を出た瞬間には顔つきが変わった。
「いっちょやるか………」
×××××××××××××××
オマケ
「うぉぉおー!!みぃなぁぎぃるぅー!!」
遠ざかった幸村の叫び声が聞こえた。
「ははっ………らしさが戻ったけど普段より暑苦しさ倍増か?」
慶次はまた苦笑いをしてしまった。
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