太陽と月の距離
出会い










ネオンの煌めく騒がしい街並み




欲が溢れ、秩序の乱れるこの場所は歌舞伎町────











「お兄さぁん、一緒にお酒飲まな〜い?」

「いや、まだ仕事中故にっ」

「赤くなって可愛い〜」

「しっ失礼する!」







多くの客引きが点在する雑踏を掻き分ける男が1人。






「ハァ………何なのだ……この破廉恥な街は」










男の名は真田幸村





職業は………刑事である。
















──────

「よいか幸村!お前は今日から新宿署配属で、街の治安を無事に守るのだ!」

「分かりましたお館様!この幸村、必ずやお役に立ってみせまする!」

「その心意気だ!幸村ぁ!」

「はい!お館様ぁ!」














──────

端から見れば暑苦しいやり取りをして、地域密着の穏和で人情の溢れる交番勤務から緊張感のある職場へと移動になったのだ。













「はぁ………慶次殿はどこに行かれたのであろうか?」






先輩刑事の前田慶次と巡回していたのだが、客引きやら通行人やらの人混みに揉まれてはぐれてしまっていた。







(あれは……?)





周囲に意識を配っていたので、路地裏にいる人影に目が止まった。












数人が1人を囲んで何か話しているようだ。






(恐喝……!?)





胸倉を掴む様子が見え、幸村は路地裏へ駆け込もうとした………





が、







目を疑うような一瞬の出来事に足が止まってしまった。










「うぅ……」





絡まれているはずの男が立ち、その周りには絡んでいたはずの男達が倒れていた。







(何だ……今のは……)










一連の動きは流れるようで無駄がなかった。






まず一撃で1人を倒し、呆気に取られて反撃が遅れた隙をつくように拳と蹴りで残りを沈めた。






「…………」





サラリと揺れる鷲色の髪。



長めな前髪の奥には眼帯が覗いていた。





足元に倒れる連中に落としていた片方の視線がゆっくりと外された。








「ッ!!」







その男は幸村が見ていることを知っていたかのように、幸村と視線を交わらせて軽く笑った。







鮮やかな動きや不敵な笑みに幸村は息を飲んだ。




時が止まったと錯覚するくらいに意識は吸い込まれてしまった。












「───ぃ、おいっ!」

「ッ───慶次殿!?」






不意に肩を叩かれて我に返ると、そこには探し人が立っていた。





「どうした幸村?狐に摘ままれたような顔してるぜ」

「今そこで喧嘩が………あれ?」





路地裏に視線を戻すと、立っていた男も倒れていた男達の姿も見当たらなかった。






「なんだよ?夢でも見てたのか〜?」

「いや、そんなはずは……」

「ま、ここは夢や欲望や金や権力の渦巻く街だから何があってもおかしくねぇよ」

「………」

「この街に飲まれるなよ……新人」











ネオン煌めく雑踏の街




ここは歌舞伎町────















×××××××××××××××

オマケ






「ところで慶次殿はどこにおられたのか?」

「あぁ〜俺ぇ?……いやぁ〜可愛い娘がいたからさぁ………」

「慶次殿こそ飲まれないで下されよ!」







つづく

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