太陽と月の距離
偶然











若い男が集団暴行に会い、意識不明の重体。


微量の覚醒剤の反応が出たので刑事課は捜査に追われた。









「他人に無関心な今の世の中じゃ、聞き込みなんて意味あるのかなぁ〜」



慶次は街中を歩きながらボヤいていた。



「何を申すか慶次殿!警察は足で事件を解決するものですぞ!」

「はは………」




張り切っている熱血な幸村に苦笑いしてしまった。




「でもさぁ……どうせ歌舞伎町に来るなら夜の方が良かったよ」

「夜………」




華やかだし可愛い子がいっぱいだし……と、まだボヤいている慶次だった。




(……政宗殿とお会いしたのも夜だったな………)




偶然見掛けた1度目も、再会して声を掛けた日も夜だった。




(……毎日短い時間でも電話で声が聞けて幸せですが、お会いしてお話がしたい………)




幸村は胸が痛み青空を見上げた。




「ん?どうした?」

「………いえ、某は贅沢だなぁと思っていただけで」

「何?人の話聞かずに恋人のこと考えてたのかよ〜!」

「す、すみませぬ!」



幸村はヘッドロックをかけられて、うっかりしていたことを詫びた。




「もう昼前だし、飯にして恋バナでも聞かせてもらおうかね」

「何ですか恋ばなとは??」

「お前の大好きな子のこと聞かせてくれよ」

「そんな……!」



なかなか聞き出すことが出来なかった幸村の恋愛が楽しみで仕方ない慶次は、赤くなった幸村の背中を押した。







「………真田幸村……?」

「────ッ!?」





聞き間違えることのないハスキーボイス………






「政宗殿ッ!?」





声がした背後を振り返ると想い人が立っていた。




「やっぱりお前か」

「ままま政宗殿ッ……」




会いたいと願っていた人物が笑顔を向け歩を進めてきて、幸村は驚きのあまり腰が抜けそうになった。




「仕事中か?」

「は、い……政宗殿も?」

「あぁ」

「そ……そうなんですね」

「Hey?どうした」

「あ……いえ……」



黒スーツ、淡い紫のYシャツに濃い紫のネクタイを身に纏った政宗を直視出来ずにいた。




「スーツがお似合いで……」

「そうか?」

「はい!とても格好良いです……」

「ククッ……変な奴………ん?」



赤くなりモジモジする幸村を笑った政宗は、側に立つ大男の視線に気付いた。



「え?………あっ!すみませぬ!ま、政宗殿!こちら某の先輩で慶次殿です!」


幸村もうっかり慶次の存在を忘れるくらい舞い上がっていた。



「慶次殿!こちら某の………あの……政宗殿です!」



某の恋人……という単語が頭に浮かび、真っ赤になりながら頭を振り、思い上がった邪念を消した。


「ども、よろしく」



慶次は人懐っこい笑顔を向けたが、政宗は無表情で軽く頭を下げただけだった。


「あぁ〜………っと、二人で飯でも行ってこいよ」

「えっ!」

「どうせ飯にしようとしてたんだしさ」



慶次の提案にキラキラと目を輝かせた幸村。



「政宗殿!お時間ありますか!?」

「ククッ……Okey」

「では!慶次殿お言葉に甘えます!」

「おぅ……1時間後には戻れよ」

「はいっ!」




偶然出会えた喜びが体全体から溢れる幸村だった。













×××××××××××××××

オマケ


(あれはどう見ても恋する顔だよな………

でも相手は男だよな………

止めるべきか………

いや、あんな幸せそうなんだ……

人の恋路に首突っ込むのは野暮だよな……

けど幸村、それでいいのか?)




「あ、慶ちゃんだぁ〜♪慶ちゃん何してるの〜?」

「何もしてねぇよ〜、ねぇねぇ一緒にお茶でもしないか?」

「うん!行く行く♪」




慶次は幸村を見送った後、思い悩んでいたが、知人の女の子が通りかかったことで『幸村』という単語は頭から抜け落ちてしまった。


恋の伝道師恐るべし。

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あきゅろす。
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