太陽と月の距離
発信














「あははははははははっ」

「笑い過ぎです……」

「いや、お前!同業者に連行されるなんて笑い話だって!」




幸村の昨夜の事件を聞いた慶次は爆笑していた。




「何々?昨日はデートで浮かれちまったのかい?」

「デートではござらん…………」

「あれ………えっと………フラれたんじゃないよな……?」




からかっていた慶次だが、幸村が苦い顔をしたたままだったので不安に刈られた。




「想いを馳せると………感情が抑えきれず……」

「ドキドキしちゃって苦しくなるんだ」

「…………」



コクンと小さく頷く幸村を見て、慶次は安心した。



「いいねぇ〜!それが恋なんだぜ?もっと明るい顔しようぜ!な!」

「う、うむ………」



恋をして悩む姿に喜ぶ慶次は幸村の肩を抱き寄せて笑った。




「ん?………えっ!マジかよ!?」




幸村の胸ポケに入っている物に気付いて大声を上げた。




「天然記念物のお前が携帯って、どうした!?」

「これは……昨日買っていただいて………」

「連絡とれるようにって持たせてくれたのか?」

「はい………」



幸村はポケットの上から携帯に手を当てて、ほんのり頬を赤くした。




「すげぇな……両想いじゃんか!」

「そっそんな……ただ某が変わっていて楽しいと仰るだけで……そんな……」

「いやいや!絶対お前好かれてるって!良かったな」



幸村は背中をバンバン叩かれて、そんなことはないと思いながらも赤くなってしまった。




「それでちゃんと使えるのか?」

「いや……まだ使ってはござらん……」

「電話しろって!昨日の礼も兼ねてさ!」

「しかし……」

「携帯持たせたからには電話待ってるからよ!」

「けれど今は勤務中で」

「仕事より恋だ!」




奥手な幸村に力説した慶次だった。















─────

「政宗殿………」




今は昼休み。

幸村は署の屋上で携帯を見つめていた。




慶次の力説が浅井部長の耳に届き、説教を食らって監視もされて真面目に仕事をして今に至るのだ。




(………このボタンを押すことで貴方と繋がれるなんて不思議だ……)




教わった通りに履歴から政宗の名を表示させ発信ボタンを押した。




(政宗殿………貴方の教え方が上手いので、某は使えましたよ……)




初めての携帯で政宗への電話


コール音が聞こえないくらいに心臓が踊っていた。




『Hey!ちゃんと使えたな』



喜ぶような明るい声が聞こえた。



「あっ、ゆっ幸村でござる!」

『分かってるよ』

「あのっ、今お電話大丈夫でしょうか!?」

『無理な時は出ねぇから気にするなよ』

「は……い」




優しい口調に幸村は胸がきゅんとした。



「き……昨日はありがとうございました」

『俺の方も楽しませてもらってありがとよ』

「いえ……」

『今は昼休みか?』

「はい」

『弁当?』

「はい!署内で注文してる弁当ですが」

『ククッ……仕出しじゃあオムライスはねぇからって泣くなよ?』

「そ、そんなことはないですよ!」



電話越しでも目に浮かぶ、政宗の悪戯な笑顔に幸村は赤くなり膨れた。



『……今日は泊まりか?』

「はい、昨日が休みだったので当直ですよ」

『仮眠で爆睡したりすんなよ?』

「ぅ……それは……」

『Ha!体験者かよ!お前らしいな』

「あれは……仕方なく……」


政宗を想い、眠れない夜があったことを思い出した。



『……暇だったらまた電話してこいよ』

「はいッ」

『午後も頑張れよ……』

「はいッ!」

『………じゃあ、またな』

「……はい……失礼します……」





短い会話時間だったので名残惜しさはあったが、幸村は心が満たされていた。




「はぁぁあ〜………」




幸村はパタンと携帯を閉じると同時にしゃがみ込んでしまった。




(政宗殿………!会いとうございます………)



沸き起こる感情を抑えるように膝を抱えたが、収まるわけもなかった。




「政宗殿ぉ……」




真っ赤になり涙目で悶える幸村だった。


















×××××××××××××××

オマケ


「嘘だろ!?あの真田が携帯って?」

「真田ってあのタイムスリップ野郎だろ!?」

「幸村君が?ホントに?」


幸村が携帯を持ったことは署内に広がりちょっとした騒ぎになってしまった。




「群がっていないで仕事をせんかー!!」



幸村の所属課には野次馬の人垣が出来たが、浅井が蹴散らしていた。




「政宗殿…………」




当の本人は上の空で外野の騒ぎには全く気付かずにいるのだった…………

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