太陽と月の距離
回想
「ハァ…………」
幸村は自室のベッドに倒れ込んでいた。
どのように帰宅したのか憶えてはいないが、夢のような時間を過ごしたことはしっかりと記憶していた───
……─────
「政宗殿はおいくつなんですか?」
「26だ」
「某は2つ下でござるよ」
「Ha!もっと年下だと思ったぜ…………それだもんな」
幸村がスプーンでつつく料理を指した。
「おっ、オムライスは某がよく作ってもらい好きなので……」
赤くなる幸村に対して、政宗は目を細めた。
「………母親に……か?」
「いえ、幼馴染みの同居人にです」
「へぇ」
ほんの少し声のトーンが下がったのだが、浮かれている幸村には気付かなかった。
「佐助というのですが、とても料理が上手く居酒屋をやっておるのです」
「ふぅ…ん……」
「……そういえば政宗殿のご職業は?」
幸村の質問に政宗は口端を上げた。
「………見合いみてぇだな」
「すっすみませぬ!!某っ政宗殿のことが知りたくてつい!」
指摘されて幸村は狼狽した。
「ククッ……いいんじゃねぇ……知りたいってんなら教えてやるよ」
「………宜しいので?」
「あぁ………」
机に頭をぶつけそうな勢いで頭を下げた幸村だったが、優しい一言で上目使いで政宗を見上げた。
「俺は一応……不動産をやってる」
「凄いですね!」
「別に凄かねぇよ……土地転がしたり管理してるだけだ」
「凄いですよ!地図に残る職業ですぞ!」
「面白いこと言うな……」
大抵の人間は「金持ちだ、いいな」と反応をするが、幸村は尊敬の眼差しを向けていて政宗は少し気恥ずかしさを感じた。
「俺には、命掛けて人のために働くお前の方がスゲェと思うぜ?」
「そんな……」
幸村は嬉しくて照れ臭そうに笑った………
────……
(………ハンバーグの付け合わせの甘い人参が苦手で……某の話をよく聞いてくれて……楽しそうに笑って下さる)
幸村は政宗の仕草を一つ一つ思い出した。
(長い前髪で隠していたが、眼はどうされたのだろう………もう長い間片目のようだが……)
幸村はゴロンと仰向けになった。
(さすがに不躾な質問は出来なかったが………片目でも強く、美しい眼差し……)
「もし………両目で見つめられたら………」
ドクン………
目を閉じて政宗の姿を思い浮かべると、体の熱が上がるのが分かった。
(華奢な体……白い肌……長い睫毛……細い指……)
ドクン………
「政宗殿………」
政宗のひんやりとした指先が触れた頬に手を添えると体が奮えた。
「あぁ………政宗殿………ッ」
幸村は、疼き熱を増してきている下腹部に手を伸ばした。
(いかん………政宗殿を考えると……)
手は伸ばしたが、下唇を噛んでそれ以上の刺激は与えぬように耐えた。
「いかん……このままではいかんッ!!」
幸村はガバッと起き上がり家を飛び出した。
「うぉぉー!!気が弛んでいるから良からぬ意識が働いてしまうのだぁ!!」
幸村は夜道を爆走した……………
×××××××××××××××
オマケ
「叫びながら走る不審な男を保護しました」
「君さぁ……夜中に叫んだら迷惑だろ?」
「申し訳ござらん………」
「その男は自称警官と名乗っています……」
幸村は巡回中の警官に職質されて交番に連れて来られていたのだった………
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