太陽と月の距離
接近
食事をしたばかりなので店に入ることなく、携帯ショップ近くにある公園のベンチに座った。
夜の公園は幸村には刺激が強い。
体を密着させながら通り過ぎるカップル、違うベンチではイチャつくカップル、微かに聴こえる喘ぎ声………
「ほら、開けろよ」
「あっ、はい」
目を白黒させていた幸村は我に返り、貰ったばかりの商品を開けた。
「お前の携帯だぜ」
「おぉぉ………」
「ちょっと貸してみろ」
「はい」
政宗は携帯を受け取ると自分の携帯も取り出して何かいじり始めたが、幸村には「何か凄い」としか分からなかった。
「ほら、いいか?」
「はいっ」
「電話したい時はここを押すと履歴が出る……俺の名前を選んで通話ボタンを押せ」
「はい………」
まだ政宗しか登録されていない携帯電話。
[伊達政宗]と表示されたディスプレイに幸村は胸を弾ませた。
「俺は大概電話には出られるからいつ掛けても構わねぇよ」
「はいっ」
「お前の場合はそうもいかねぇだろうから、出れない時は出なくていい……時間が出来たら掛け直せ」
「はいっ」
「着歴はな……ここを押して……」
政宗は初歩的な、発信・着信・マナーモード・電波や電池について教えた。
普通なら「取説見りゃ分かるだろ!」と投げてしまうことだが、天然記念物並みに遅れた幸村が進化するのを見るのが楽しかったのだ。
「Okey?」
「はいッ…………」
当の幸村はというと、分かりやすい説明で初めての携帯でも使い方を理解出来たのだが………
(………なんて美しい指だろうか………とても良い香りがするし………長い睫毛だ……)
同じディスプレイを覗き込んでいるので自然に体は近くなり、幸村は盗み見てうっとりしていた。
(あぁ……美しい方だ………)
「───ぃ………聞いてるのか?」
「はっはい!!」
「人が教えてんのに……お前なぁ……」
上の空になっていた幸村に対し、明らかに不機嫌になった政宗だった。
「あのっ」
「あぁぁ〜………ん」
「ッ!!」
慌てて謝罪しようとした時、大きな喘ぎ声が聞こえて幸村は真っ赤になった。
「クッ………そういうことか………」
「すっすみませぬ!」
「……こんな場所はお前にゃ刺激的だったな」
まさか自分に夢中になっているとは思わない政宗は、お子様な幸村には集中出来なくて当然だと解釈して苦笑いした。
「悪かったなCherryboy」
政宗は赤くなった幸村の頬を撫でてた。
「ぁ…………」
ひんやりとした指先は、立ち上がると同時に頬から離れていった。
「……ちゃんと携帯使えよ?」
「は…い………」
「じゃあな」
「はい………」
政宗は優しい笑みで幸村を見下ろし去っていった。
幸村は満足に別れの言葉も言えず、見送りも出来なかった。
何故なら、初めて触れられたことで性欲の炎が灯ってしまったからだ……
「政宗殿………」
そっと触れられた頬に手を添えた。
×××××××××××××××
オマケ
「いやぁぁ〜ん、らめぇぇ〜………」
「ッ!!?」
どれだけ時間が経過したか分からないが、また暗闇から響いた喘ぎ声に幸村は我に返った。
「はっ………破廉恥ぃぃぃー!!!」
絶叫が闇夜に木霊した。
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