太陽と月の距離
繋がり













「クックックッ………」

「わっ……笑い過ぎですぞ!」




政宗は腹を抱えながら声を殺して笑っていた。



「Sorry……だがよ……お前それ」



政宗は笑い過ぎて零れた涙を拭いながら幸村の前にある飲み物を指差した。




「クリームソーダーって………クククッ」

「美味しいでござるよっ」


食後の飲み物に、またしても子供じみた注文をした幸村だったのだ。



笑われて赤くなり膨れた幸村だが、鮮やかな緑色の飲み物に手をつけると目が輝いた。




「ククッ……さっきのオムライスもそうだが、そういうの似合うな」



一頻り笑った政宗は呼吸を整えて、自分のコーヒーに手を伸ばした。



「………あれだけ笑われては似合うと言われても複雑でござる……」

「褒め言葉だぜ?」



アイスをつつきながら上目使いで拗ねたように睨む幸村に、まだ意地悪を言う政宗だった。





「今日はホント笑ったよ」

「たくさん笑われました……」

「楽しかったぜ」

「は……はいっ!某も!ありがとうございましたっ」



幸村の鼓動は早くなった。



話をしたり笑われたり、美味しいご飯を食べたり、政宗の仕草や表情を見て胸を踊らせたり………



時間が経つのを忘れていたが、政宗と接点が欲しくて誘った『お礼に食事』という名目が終わろうとしている。



「まっ……政宗殿……」

「ん?」

「また…………また、お誘いしてもよろしいでしょうか………?」

「Ah〜…………」



幸村は次の約束を求めたが、政宗は何か考えるように目を逸らした。




(ダメか…………)




即答してくれないことが答えなのかと諦めた。




「お前……まだこの後時間あるよな?」

「はい……構いませぬが?」

「Okey!ついて来い」

「え?あ、はいっ」





足早に店を後にした政宗の背中を追った。



(一体どこへ………?政宗殿……………)



華奢なのに力強い背中を見つめて胸が締め付けられる想いがした。




(あぁ……さっきは何とか落ち着いたが……某は政宗殿に抱く感情は何だ………本当にこれが恋なのか?)




反応してしまった下半身熱は、食事をすることで鎮火したが、心を占める感情は消えることなく大きく広がるばかりだった。














──────

「ここは…………」



政宗が場所も告げずに連れてきたのは携帯ショップだった。



「好きなデザインを選べよ」

「えっ!そんな!某は携帯なんてっ」

「連絡するにも携帯ねぇと不便だから買ってやるよ」

「それでは政宗殿に申し訳ないッ」

「俺が連絡したいから、俺がお前に持たす……何か問題あるか?」

「……いえ………」



『連絡したいから』という言葉に嬉しくて顔が赤くなってしまった。



「ククッ……どれがいい?使い方は俺が教えてやるから好きなの選びな」

「はっはい!」



幸村は携帯をじっくり見ることさえ初めてなので、不思議そうに眺めながら「おぉ」などと感動して声を出していた。



「クククッ………」



それを眺める政宗は声を殺して笑っていた。




「………………」

「それがいいのか?」

「あっ、いや………」




幸村の視線が止まったのを政宗は見落とさなかった。





「値段なんて気にすんなよ」

「しかし………」

「俺も色違いで使ってる………気が合うな」

「ッ」




政宗は店員を呼び、話を進めていた。



幸村は、偶然目に止まった一台が政宗と同機種だったことが嬉しくて、顔がにやけそうなのを必死に堪えた。










─────

「本当に良かったのでしょうか……?」

「構わねぇよ」



程よい重さの紙袋を幸村は抱えた。




「そこの公園で座るか」

「あ、はい?」

「俺が手取り足取り教えてやるよ」

「おっ……お願い申し上げる!」




携帯の使い方を教わるだけなのだが、幸村は一気に体温が上がり生唾を飲み込んでしまった。












×××××××××××××××

オマケ


契約をして手続きの処理待ちの間、幸村は店内を見渡して呟いた。





「これだけ電話が並んでいると、電話が掛かってきたのがどれか探すのに苦労しそうですね」

「プッ─────」

「?」



政宗は目が点になり思わず吹き出してしまった。




「アハハハハハハッ!!」

「なっ!何でござるかっ!?」

「お前サイコーだぜ!!ハハハハハッ」




涙を流すほど大笑いする政宗と意味が分からず困惑する天然記念物幸村だった。

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