捧げ物
3周年記念
何年経っても──────















豪華絢爛な華が咲き乱れる。



人の心を惑わす美しき華。

そして、潔く散りゆく華。





さららと吹き去っていく風に靡く髪と着流しの裾。


妖しく、艶やかに、微笑むその姿。



淡い薄紅色をした満開の華すら霞んでしまうほどの立ち振る舞い……










「随分懐かしい顔だな」

「そうだね………久し振り」




低い響きのある声色に、舞い散る花びらさえも引き立て役となる。





「まさか京の都で見知った顔に会うとは思ってなかったよ」

「こっちの台詞だ」

「しかしまぁ、相も変わらず………」



美しい、





長い年月を経て向き合ったため、

歳を重ねた証は所々に見て取れた。


風にさらりと揺れる髪は白い箇所もあり、
細かな皺は穏やかさを連想させた。


しかし、ぴんと伸びた背筋や、纏う雰囲気はあの頃と変わらず




美しい





口に出さずに本音を飲み込んだ。




「変わらないのはお前の方だろう?」

「そう?」



最後に会った、若かりし頃と変わらない姿。

歳を重ねたのはこちらだけかと錯覚を起こすような出で立ち。




「…………忍のなせる術か?」

「いや、」





少し困ったように笑う。





「忍は辞めたよ…………旦那がいなくなった時に」

「………そうか………」



空気が一瞬重くなった気がしたが、それを払うような柔らかな笑みを向ける。




「今は薬屋をしてるんだ」



ほら、と背中の籠を見せる。



「不老長寿の薬でもあるのかよ」

「ふふふ……結構色々持ってるんだよ〜」



膝をつき、籠を下ろして中を探る。



「何か気になる症状ってある?」

「………医者でも治せねぇ病にならかかってるぜ?」

「ぇ……………」



しゃがみ込んだすぐ前へと立ち、そっと頬に手を伸ばした。



「なぁ………治してくれるか?」

「俺に治せるかな……」



ふふっと笑いながら立ち上がり、身体を寄せる。



「本当に…………変わらないな」

「そう?俺様も老いたもんだよ」



頬に添えられた手に手を重ねる。



触れた途端に溢れてくる感情は





『愛おしい』





「治してくれよ…………」

「治したくないなぁ………」



白く細い腕を首に回す。



「じゃあ、もっと重症にしてくれよ」

「久々なんだからそんなに煽らないでよ」

「満足させられなかったら、この首置いていけよ?」

「俺だって若くないんだから、無茶言わないでよ〜」



くすくすと笑い合う歓び。



「………………」



どちらから切り出すわけでもなく

言葉で伝えるわけでもなく


願うように、欲するように唇を重ねた。








白い素肌は舞い散る花びら

零れる吐息は風のざわめき

高まる想いは不治の病


万能薬は、



互いの存在



何年経っても、愛してる




















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『七転び八起き』3周年記念小説
どれだけ経っても、どれだけ寄り道しても
やっぱりアンタが1番だ。

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あきゅろす。
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