捧げ物
19万打☆歩様へ
現パロ・佐政





















重々しい扉を開けると、
薬品の匂いが鼻につく。

白衣を纏った職員達が数字の羅列するモニターを凝視したり、機材を操作したり………

検査・解析・結果・結論………



理系そのものといった雰囲気に気後れしたが、意を決す。



「………猿飛佐助って奴はいるか?」

「はい…………?」



突然声を掛けられた出入口付近にいた男は、場に不釣り合いなきっちりとしたスーツ姿をきょとんと見上げる。



「猿飛って奴………」

「佐助ですか?………今は奥で検体見てると思いますが」

「そうか………邪魔するぜ」

「いや、あの、ここは関係者以外立ち入り禁止なのでござるが」



立ち上がって制止した。



「幸村、やめとけって………公務執行妨害で捕まるぜ?」

「慶次殿?」

「そいつ、伊達警視」

「なんと………ッ!貴方があの最年少で警視正候補に選ばれた伊達政宗殿ですか!」

「………」

「お目にかかれて光栄です!」



握手を求める勢いの幸村は目を輝かせて政宗を見つめた。



「幸村ぁ、感動は伝わったからまずは通してやれよ」

「ぬぉ!これは失礼しました!」



通せんぼをする幸村に見兼ねた慶次は、政宗を奥へと通し入れた。



「…………しかし、あの伊達殿が用とは、佐助は何をやらかしたのだろうか」

「さぁな………お前が知らないもんを俺が知ってるわけないだろ」



部屋の奥へと歩みを進める政宗の、ピンと伸びた背筋を慶次は面白そうに口角を上げて見送った。









「…………アイツか………」



奥には手術室のような部屋があった。

台に横たわる検体を確認する男………




マスクをしているので表情は確かではないが、
愉しんでいるかのように細められた目元。

手袋越しでも分かる長い指先が、
まるで恋人の身体に触れるように流れていく。



ゆっくり、丁寧に、優しく………






「ッ…………」




検体が相手なのだが、その愛撫にも思える指の動きに政宗は背筋がゾクリとした。




「呼び掛けないと気付かないよ………」

「ッ」



ガラス1枚隔てた部屋の前で棒立ちになっていた政宗の肩を慶次は叩き、勢いよくドアを開けた。



「佐助!お前にお客さん」

「……………んー………?」



声を掛けられて男は顔を上げた。



「猿飛………佐助………」

「はい?」

「ちょっと時間いいか?」

「…………えぇ………」



手袋とマスクを取りながらひんやりとした部屋から出て来る。



「………ちょっと室長の部屋借りるから誰も入らないでね」

「………ごゆっくり〜」



何事か分からないからこそ興味を示していた慶次だったが、佐助に一掃されて大人しく引き下がった。






パタン







外部との接触が遮断された個室に入り、佐助は自分の部屋のように奥にある革張りの椅子に腰を下ろした。



「で、何の用ですか?伊達警視」



扉に背を預けたままの政宗とは対称的に、佐助は足を組み笑顔を向ける。



「やっぱり………あんただったんだ…………佐助先輩………」






優秀な監察医がいるという噂を聞いた。


どこにでも能力の秀でた者などいるものだが、

『オレンジの派手な髪色をした色男』

という追加情報に政宗は心が奮えた。



遠い記憶の片隅にある、風になびく明るい髪………



自分の知っている人物か?



確かめたくても自分が事件を担当しているわけではないから、容易には近寄る理由がなかった場所なのだが、政宗はついに訪れてしまったのだ。






「久し振りだね………高校の卒業式以来かな?」

「ッ……………」



政宗は拳をぎゅっと握り締めた。



「あんたが………俺を捨てた日以来だな………」









遠い遠い記憶が甦る………







『俺の高校生活は今日で終わり、お前との関係も今日で終わり』



いつもと変わらない口調で突然告げられた一方的な別れ話。



『進学で地元離れるんだし、お前とは終わりだよ………政宗はもう1年あるんだから彼女でも作ってハイスクールライフを楽しめよ』



泣き叫んで手を伸ばしても、笑顔で立ち去っていったあの日…………

携帯も通じず、通い慣れた部屋も空っぽ。


唐突に訪れた虚無感…………








「医学部に進んだのは知ってたけど、まさか………監察医だなんて………」




接点など2度と見付からないと思っていたのに………




悔しい?
虚しい?
憎らしい?
愛しい…………?




政宗は唇を噛み締めて俯いた。





「それで…………お前は俺に恨み辛みを零しにきたの?殴りにきたの?」

「…………」

「それとも…………抱かれたくてきたのか………?」

「ッ…………」






もう何年も忘れていたというのに、指先の動きを見ていて思い出した感覚。

背中がゾクゾクして疼き始めた下半身。




「どうした?」

「ぁ…………」





あの手で
あの頃のように







「死体なんかじゃなくて………俺の身体を………好きにして下さい」






長年心に閉まっていた言葉はこんなものではないのだが、
今、頭や身体が欲して止まないのは目の前の男。





殴りたいなら後で殴ればいい。
罵ることも後で出来る。




今は何も考えず、ただただ快楽に溺れたかった───────


















×××××××××××××××

歩さんよりリクエスト頂戴しました!
『監察医佐助とキャリア政宗』
という、私の偏愛心を刺激する設定!
シリーズ化してもいいようなたぎる想いですが、グダグダになりそうだったし、後味の悪い締め方に・・・。

こんなんで良ければ受け取って下さい!

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