捧げ物
1000打☆爾亜様へ
戦国・幸+政
カキィ─────ッン
ザザッ─────
死闘を繰り広げている二人は激突の反動で間合いをとった。
「フー、フー………」
「ハァ……ハァ……」
既に日常と化している仕合は奥州で行われた。
今回も飽きるまで刃を交えるかに思えた…………が、
「……やめだ」
「ま、政宗殿!?」
突然政宗は背を向けて刀を鞘に収めてしまったのだ。
「まだ決着がっ………」
「Ah〜?こんなやる気のねぇ打ち合いなんてやってられるかよ!」
「政宗殿!」
「おい!小十郎!湯の用意をしろ!……………その小汚ねぇ顔でも洗って来やがれ」
政宗は一瞥をくれて去ってしまった。
残された幸村は、忍が肩を揺らすまで呆然と立ち尽くしていた。
「旦那………右目の旦那が呼んでるよ……」
「某は……何故怒らせてしまったのだろう……」
「ん〜……ま、取り敢えずお湯戴いてきなよ」
佐助は小十郎の睨みを避けたくて幸村の背中を押した。
ブクブクブク───
幸村は小さめだが檜作りの風呂に顔を浸けていた。
(政宗殿………某は貴殿に嫌われとうござらんのに……)
「はいは〜い旦那!溺れる前にお湯から上がってね」
「佐助ぇ………」
「そんな情けない声出さないで……竜の旦那が部屋に来いってさ」
「政宗殿が!?」
ザバァッ───
「ちょ!体拭いて!旦那!着物は着てよぉ!!」
猪武者を主に持つ忍の苦労は絶えない……………
───────
「政宗殿…………幸村でございます」
勝手知ったる仲ではあるが、幸村は恐縮しているので膝をついて襖を開けた。
「政宗殿…………」
政宗は肘置きにもたれるように頬杖をついていた。
幸村を確認したその目はまだ冷たいままだった。
「……………政む」
「今日の腑抜けた仕合は何なんだ……」
「某は………」
「何を考えていた?」
低音の声で幸村を威圧した。
「俺はあんたの喉元を狙うことばかり考えてたぜ」
「それは某とて!」
「じゃあ………俺の唇を奪おうと見ていたのは何故だ?」
「!!」
幸村は政宗の一言に目を見開いたが頬が赤くなり俯いた。
「某…………」
「対峙する今日までに、頭の中で俺を何回組み敷いたんだ?」
「その様なことは………」
幸村は正座をした膝の上で拳を固く握り締めていた。
「俺が気付かないとでも思っていたのか……?」
政宗は声色はそのままだが、口元を緩めながら立ち上がった。
「物欲しそうな目で俺を追っていただろ?」
政宗は歩を進めた。
「俺は回りくどいのは嫌いなんだよ………」
二人の距離が縮まっていく………
「言えよ………」
「某は………」
パサッ─────
幸村は畳に何か落ちる音を聞き、目を開けると───
政宗の足元と帯が視界に入った。
「まさ────!?」
慌てて思わず顔を上げてしまった幸村の顎に手が添えられた。
「Hey…………素直に言えたら俺を抱かせてやるよ………」
幸村を見下ろす政宗は、着流しの合わせ目がずれて白い肌を覗かせ………
子供のような悪戯な笑みを浮かべていた。
「あ……………」
胸の高鳴りと下半身の疼きで幸村は泣きそうな顔をした。
「言え…………幸村……」
「某……政宗殿を……夢うつつ考える程……お慕いしております………」
「フッ……………来なっ」
「政宗殿………!!」
幸村は膝立ちになり、政宗を抱き締めた。
──────────
「あぁ……美しい………」
政宗は着流しの上に裸体を寝かしている。
「武具の下はこの様に華奢で美しいというのに、貴殿は何故お強いのだろう……」
幸村は政宗を見つめ、奥底から沸き起こる感情に体を奮わせた。
「男に華奢とは褒め言葉じゃねぇな……」
「某の言葉選びが下手なだけであって、その、政宗殿はとても、あの」
「ククッ…………幸村……」
「あっ──────」
悪戯に戸惑った幸村を可愛いと思ってしまった政宗は、幸村の首に腕を回して自ら唇を寄せた。
それが始まりの合図───
「ん………あ…………」
武人の固い手が不器用ながらも愛しそうに愛撫をしている。
「あっ………ん」
不馴れな動きではあるが、性感帯はきちんと刺激していたので政宗はうっとりと表情を変え、鼻から抜けるような甘い吐息を出した。
「ま……政宗殿……そろそろ………事を進めても……」
幸村のどこか辛そうな真剣な顔は、快楽を感じたくて仕方ない様だ。
「Ah〜………いいぜ……」
許しを貰った幸村は、政宗の足を広げた。
触れられると意識した蕾はひくりと収縮した………
が…………
当てられたのは指の比ではない太さの熱い塊で、政宗は血の気が引いた。
「幸村っ!」
政宗は慌てて突き飛ばした。
「テメェ………慣らしもせずにどういう了見だ!」
「え……某が何か」
「何か、じゃねぇ!………」
政宗は殴りかかる勢いだったが、はっと我に返った。
「お前……色事のいろはをどこでどう憶えた?」
「某………真田隊の者に………愛しさの限りあ、愛撫を続け……甘く鳴き、腰をくねらせたら蜜で濡れておるから、後は……」
「それは女相手の手際だー!!」
「ぐぉ!?」
政宗は怒りに任せ、渾身の力で幸村を殴り飛ばした。
「興醒めだ!今すぐ俺の前から消えな!」
「政宗殿!?」
政宗は着流しに袖を通して刀を掴み上げた。
「──はいはい!竜の旦那待ってちょうだい!」
「テメェも地獄が見てぇのか〜?」
「それは遠慮します!」
佐助は二人の間に割って入ったのだ。
「旦那にはちゃんと俺様が教えておくからさ、ごめんね」
「Ha!駄犬の世話はしろよな!」
「あははは〜」
「………消えな」
佐助は真っ黒い鴉を呼び出し、幸村を脇に抱えて飛び上がった。
「佐助!某はまだ!」
「旦那殺されちゃうから」
「ま、政宗殿ぉ!」
地上に残る政宗に手を伸ばした。
「幸村!次までに腑抜けてんじゃねぇぞ!お前が俺を倒したら────」
──抱かれてやる───
忍は遠くなった唇の動きを読んだ。
(あれ…………旦那には教えた方がいいのかな…………)
「ましゃむねどのぉ〜………」
(ま、地上に降りるまでは取り敢えずは大人しく項垂れててもらおう)
次の対峙は今までにない死闘になるだろう…………
×××××××××××××××
リクエストは、誘い受のサナダテで頂戴しましたが……
濡れ場表現に自信がないのでドタバタで誤魔化しちゃいました(笑)
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