進め!巨人殺し
あらゆる感情(ジャン受)
※『年頃なので』の続き3話目







「あ、戻ってきた!良かったー」
「何だよアルミン・・・・心配し過ぎだろ」
アルミンは寮の前で3人の帰りを待っていた。


「え!?何!?血?ジャンどうしたの!?」
「木に頭打って倒れたんだよ」
ライナーに担がれて動かないジャンとエレンの顔を交互に見る。

「ホントに?ねぇ、エレン?」
「はぁ?何だよそれ」
「じゃあ俺、救護室でコレの手当てしてくるよ」
「あ、俺も行くよ」
アルミンの疑うような口振りにエレンはムスッとしたが、ライナーが立ち去ろうとするので意識はそちらに奪われる。

「いいよ、俺1人で」
「いや、俺も」
「コイツが目を覚ました時にまた喧嘩されたら適わないからお前はいい」
「ッ・・・」
ライナーにピシャリと断られてエレンは反論が出来ず、その背中を見送った。


「ねぇ・・・・本当にジャンは木に頭をぶつけたの?」
「さっきから何だよ?俺が殴ったんだろって言いたいのか?」
エレンはアルミンの方に視線を戻した。

「いや、そうじゃなくて・・・・様子が少し変だったから・・・・」
「追いかけてたらあいつが木にぶつかっただけだよ」
「他には何もなかった?」
「・・・・何もないよ」
「そっか・・・」
互いに、互いが気付いていると気付いた。

エレンは、アルミンが自分達に何かがあったのだと確証していて聞き出そうとしていることに気付いたけれど嘘をついた。
アルミンは、エレンが何かあったのに話そうとせずに隠したことに気付いたけれどそれ以上詮索しなかった。

「俺、もう寝るよ」
「うん、おやすみ」
アルミンはライナーの様子を見に行こうか迷っていたので、エレンと一緒に部屋には戻らなかった。

(エレン・・・・一時の迷いだよね?)
親友の心中が不安定なことに胸騒ぎがした。



「アルミン!」
「ミカサ・・・・」
「ねぇ、エレンは?」
「もう部屋に戻ったよ」
来るとは思っていたミカサが、感情の高ぶっている今のエレンと顔を合わせなくて良かったと思いながらアルミンは男子寮の方を指さした。

「エレンに怪我はなかった?ジャンが血を流して帰ってきたと聞いたから」
「うん、平気だったよ」
「そう・・・・」
ミカサの目は安堵の色に変わった。

「あの男はエレンに近付けない方が良さそうね・・・・エレンに突っかかるし邪魔ね」
「・・・・いや、それは止めた方がいいよ」
「何故?エレンが怪我をしてからでは遅い」
エレンに害をなす物は排除しようとするミカサはきょとんとした。

「何故って・・・・いや、まだよく分からないけど」
「・・・・」
「だけど、きっとジャンを遠ざけるとエレンもミカサも後悔することになると思うんだ」
「そうなの?」
「多分・・・・」
アルミンは目を泳がせている。
まだエレンの気持ちが明確ではないが、思春期の興味本位に過ぎないはずだ。
だから今距離を取ったら恐らく、余計に求めて引き返せなくなるだろう。


「分かった・・・・」
ミカサの返事は重々しい。

「あなたを信じるわ」
「ありがとう、ミカサ」
「それじゃあ・・・おやすみなさい」
「うん、おやすみ・・・・」
ミカサは女子寮へと歩んで行った。

「僕も信じてるよ・・・・」
何に対して信じようと思ったのか、アルミンは口にした言葉なのに分からなかった。









────────────


「血の割に傷は酷くないな・・・・」
ライナーは濡れた布で救護室のベッドに寝かせたジャンの血を拭い落とした。

(エレンは何をした・・・?)
気を失っているジャンに何かをしたのだろうか。
それとも、鼻が感じ取った違和感は気のせいで本当に何もなかったのだろうか。

「・・・・何で、俺は・・・・」
何故こんなにジャンが気になり、エレンに嫉妬のような感情を抱くのだろうか。
ライナーは無防備に眠るジャンの手当てをしてその顔を見つめた。

初めて性を知り、戸惑いながらも快感に悶える姿。
予想外にイイ声を出し、縋るジャンにまた色々と教えてやろうと次を考えていた。
何も知らない可愛い奴に年上の自分が世話を焼く、そんな程度で十分だった。

なのに、まさかそこにエレンが手を出してくるとは思っていなかったから。
だからこそ、ライナーは心が乱された。

(・・・・確認すれば分かることか)
恐らく何かがあったのなら名残があるだろう、とライナーはジャンのズボンへ手を伸ばした。


「ライナー」
「ッ!!!!」
突然の声にライナーは心底驚き、声の方へ顔を向ける。

「ベ・・・ベルトルト・・・」
「ジャンは大丈夫?」
「あ、あぁ」
見慣れた顔にライナーはホッとしたが、心臓はまだバクバクと激しく鼓動を続けている。
ベルトルトの気配にすら気付かないほどジャンに意識を捕らわれていたということかと思うとライナーは居たたまれない。

「エレンに追われて木にぶつかったみたいだが、傷はそう酷くない」
「そうなんだ」
「お前はどうした?」
「ライナーはまだジャンに付き添うの?」
ベルトルトは質問に質問を返した。

「いや・・・・ただ寝てる感じだからもう大丈夫だろう」
「そう・・・じゃあ戻ろう」
「あぁ」
ライナーはベルトルトと共に救護室を出た。
一同期に付きっきりになるのはおかしいと分かっているから。
けれど、確認が出来ず後ろ髪を引かれる思いでほんの少し振り返ってしまった。


(邪魔だなぁ・・・・)
「ん?何か言ったか?」
「ううん、早く戻って寝よう?僕もう眠いよ」
「そうだな・・・・俺も疲れた」
ベルトルトはにっこりと微笑んだ。
ライナーもベルトルトのドロッとした黒い感情など知らずに笑みを向けた。







13.06.02
×××××××××
眠り姫を巡って男達の感情が入り交じる。




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あきゅろす。
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