戦国
如月の…A

















「チッ………」




政宗の機嫌は非常に悪い。


異国の文化を利用して自分だけ想いを伝えて満足しようとしたのに、
小十郎が口を滑らせたため、佐助への密かな恋心が公になってしまったから。


今までは鼻で笑ったり、邪険にしたり、足蹴にすることも容易だったのに、
これからは『愛情の裏返し』と捉えられて、佐助が図に乗ることが不愉快で仕方ない。



「申し訳ありません………」

「いい………」



唇を尖らして焦れている主人を見て、小十郎は己の失態を悔やんだ。

ただでさえ、手塩にかけて立派に育った政宗から、遠回しに抱いている想いを打ち明けられて、佐助には殺意を感じるというのに、
余計に調子に乗るかと思うと、自分を含めて腹立たしくて仕方ない。



「はぁ…………」



何度目なのか分からない溜め息をつきながら、墨の乾き具合を確認した。



「小十郎………呼んでこい」

「………はっ!」



幸村への文は出来上がったので、政宗は嫌々ながらも意を決した。







「いつも丁寧に返事を書いてくれてありがとう」

「………あぁ………」



何度も繰り返されている文の受け渡しだというのに、
今回ばかりは政宗は居心地が悪く、目を逸らしたまま渡した。



「ねぇ、竜の旦那………」

「な、……んだよ」



呼ばれて警戒心が高まる。



「お菓子ありがとね♪あまりに美味しいから待ってる間に半分以上食べちゃったよ」

「ん………」

「また来るね」

「………あぁ………」



政宗は何も変わった様子もない佐助に歯痒さを感じたが、引き止めるわけがない。



「あ、そうだ」

「…………んんッ!?」

「貰い物だけど、俺からも………ね?」

「ばっ………か野郎………ッ!」



佐助はチョコレートを政宗の口に一粒入れたのだ。

勿論意味は、政宗と同じ………



にっこりと微笑まれて、政宗はつい顔が赤くなってまた顔を背けた。



「猿飛ッ!お前鼻血ッ」

「へ?え、あれ!?」



小十郎に叫ばれて慌てて顔に手をやると、確かに真っ赤だった。



「テメッ………政宗様を不埒な目で見やがって!」

「ち、違う!これは、」

「何が違うってんだ?下心丸見えだろ!あぁ!?」

「いや、あのお菓子食べてから動悸が………」

「Chocolateのせいだって言いたいのかぁ!?」

「いや、そりゃ、まぁ少しはやらしいこと考えたけど………」

「ブッ殺す………!!」

「ちょ、右目の旦那落ち着いて!」



小十郎は極殺モードになり、抜刀したので佐助は外へと逃げ出した。



「あいつ………何を考えたんだ………」



一人部屋に残った政宗は、かぁっと赤くなって頭を掻いた。



「次………どんな顔して会えっつーんだよ」



政宗は耳まで真っ赤になり、火照った身体を恨むように開けっ放しになった障子から空を睨み上げた。










×××××××××××××××

オマケ

「小十郎………お前の発音はCoolだぜ」

「はっ!これも政宗様のご指導の賜物かと」



馬鹿主従。




バレンタインデー追記小説。
赤くなる政宗様が可愛い(笑)
鼻血は、チョコの食べ過ぎ?
破廉恥妄想のせい?

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あきゅろす。
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