そうだよ。
すぐ目の前歩いてんだからさ、さりげなく横を通りすぎるフリでもしてさりげなく手を握ってみたりしてさ、冗談めかして笑って茶化して、そしたらきっとこの人だって笑ってくれるから、
…簡単な、ことじゃないか。
そう。
振り返れば僕のすぐ後ろに彼がいる、それはわかっているのにどうして、手を繋ぎたいってそれだけの言葉がでないんだろう。
触れたい、たったそれだけのことがどうしてこんなにも難しいの?
「天気、いいっスね」
「…ええ…」
振り向いて、くれないかな。
つか、振り向け。振り向いてくれよ頼むからさ。
神様、今彼女が振り向いてくれたら俺、ちゃんと勇気出すから。
振り返っても、いいのかな。
わざとらしく…ならないかな。
ねぇ神様おしえてください、僕はどうしたらこのひとに触れることができるのですか。
「…………。」
(こんな時、相手の気持ちがわかればいいのに)
END