あの子の攻略本プリーズ!(学バサ/慶半)

「もう、いいよ」



酷く冷めきった紫眼が俺を見つめている。








「な、なぁっ…俺なんかした?半兵衛!待てって!」
くる、とゆっくり振り向き、相変わらずの冷たい目で俺を睨んだ。
「別に?」
あの暑苦しい真田幸村さえも一瞬のうちに凍えてしまいそうな、それほど冷たい声だった。幽霊だってこんな声出さない!

俺が固まっているのをよそに半兵衛は廊下を歩いていく。はっと気づくと既に半兵衛は姿を消していた。



「で、今日は何したんだ」
机に伏せて悩む俺の相談にのってくれる優しい政宗(とその後ろにいる面白半分の連中)に俺は応えた。
「なぁんもしてねーよ」
「お前がしてなくてもされたって思ってンだろ?」
「そーなんだよなあ」
「せいゆー!」
「An?ちげぇよ!say you?だ!」
「せ、せい、セイ!」
「げふぁっ!…旦那ァ…手、あたって…」
「ぬぅあっ!左助え!!どうしたのだ!いったい誰がっ!」
「聞け幸村ぁっ!セイの発音はsayだ!」
「おい大変だ、元親。俺がエアーマンになってるぞ」
「は、エアーマンなら倒せないんだからいいじゃねぇか」
「良くない…空気王 川´_ゝ`) もびっくりの空気だ」
「空気王も18年後にゃマジな王様だ。お前もそのうち王様になれるさ」

見事にわかる人にしかわからない話。
ひとつずつ整理していこう。
俺は政宗に半兵衛との事で相談にのってもらおうとしていた。しかし、幸村がせいゆーなんて言うから英語発音に厳しい政宗が食いついてしまったのだ。せいゆーて!say you?だって話の流れからしておかしいだろ!
せいに戸惑った幸村はセイ!という元気な掛け声のもと左助の腹を殴ったのだ。セイ!でぐーぱんち!
エアーマンと空気王のくくりは面倒なのでググれ☆

「遂に説明さえもはぶかれた…エアーマン…」
「あぁ…うじうじ悩むんじゃねえ!本人に直接聞いてこい!」
元親につまみ出されピシャリと戸を閉められた。
「アニキぃ…」
戻っても俺の居場所はないだろう。仕方なく半兵衛の居そうな図書室…いや、今日は屋上だな。に行く事にした。


風が強く吹き、耳元で音を立てる。結われた髪がバサバサとなびいて邪魔だ。
その髪の間から小さな影が見えた。
「半兵衛!」愛しいその名を呼ぶ。
当の本人は俺を一瞥してまたグラウンドを覗いた。

「半兵衛…あのさ、俺…悪かったな。なんかしちまって」
何をしたか分からなかったからそこら辺は濁して謝った。こういう時は謝るに限る。特にこいつは意地っ張りだから。

「それで?」
「へ?」
「だから、何?」
「何って何?」
「だから、何で謝るの」
「お前、怒ってるのかと思って…」
「別に…怒ってない」

(ぇ!!どういうこと!?)
怒らしたのかと思っていたのに。
背中からじゃ半兵衛のことはよく見えない。俺は半兵衛の隣に立った。
グラウンドを覗く眼はやはり冷めている。
「怒ってるだろ…」

「半兵衛…俺、半兵衛のこと好きだよ」
「…何それ」
ぐらり、紫が揺れた。
「半兵衛の全部が好き」
「何だよ」
「あの空よりいっぱい好き。大好き!」
「慶次君!」
やめないか、と半兵衛が俺の口を手で塞ぐ。瞳は俺を映している。
「半兵衛」
手をどけて、ちゃんと半兵衛を見た。


「愛してる」


「あ、だから、僕、」
うつむいて赤くなっている半兵衛が愛しい。機嫌は良くなったようだ。
「君は、どうしてっ…」
悩んでないで自分の気持ちをつたえることが一番らしい。






(世界でひとつ俺だけが持っている)





「で、何で怒ってたんだよ」
「別に (君が僕より政宗君達と仲良くしてるから!)」




――――――――――
ヘタレ慶次×嫉妬半兵衛
知らぬ顔の半兵衛はキレてる時ほどさめてます。

title by.悪夢少女

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