雨音(無双/信光死ネタ)

世界を閉じたような雨の降る、寒い冬の日だった。




濃い灰色の雲、奈落の如き闇から落ちる滴が地に当たり跳ね返る。
踏み出す度に水溜まりに呑まれる足先が痛い。





町は雨に支配されていた。


だれもいない。

雨音だけが世界を内包する。
酷く静かで、酷く喧しかった。
誰かの慟哭を孕む、音。




廃れた町の中央を流れる川は水域を増していた。橋が軋み、溢れた水が橋柱を叩く。






明智光秀は其処に居た。

唯、其処に居た。




全身雨に濡れ、漆黒の髪から、白磁の肌から、絶えることなく滴が零れる。




瞬きをひとつ。






見上げた先に、貴方が居た。






指を伸ばす。躊躇いながら頬に触れた。



なんてつめたいのだろう。


唇、首筋、途切れ、た。
全て冷たい。無機質な柔らかさ。閉じた目蓋さえ、開けば真白。

紅はない。雨に消えた。




やはり貴方は死んだのだ。


こんなにも美しいのに。





「信長様」


ごぽり。
紅はすぐに流れて消える。





梟首。
いまわたしもそちらにまいりますゆえ、しばし、おまちを。








雨を切り裂く刃が煌めいた。

流れぬ紅に濡れた躯が、





流れて消えた。





――――――――――
信光死ネタ。信光なのかは分からない。

オリジ設定(詳しく)
家康とかに殺されて信長晒し首。
光秀が家康に報復。
信長と一緒に。

title by.揺らぎ



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