壊れ物を扱うように、私に触れるキミ(家政)

お前って、いっつもそう。



戦の時みたいに、もっとガツガツきてくれて構わないのに…











【壊れ物を扱うように、私に触れるキミ】












「政宗、相も変わらず美しいな」


ほら、また。

これまでどれほど戦ってきたのだろうか。古傷だらけの節くれだった手が、俺の髪を、頬を、優しく撫でる。
男らしい固い掌。ごつごつしていて違和感のあったそれは、今はないと逆に違和感があるような、日常に欠かせないものになった。

そうなってしまったのも、家康が毎日のように俺に賛辞を送り、毎日のようにbody touchを繰り返すからだ。
在り来りな表現だが、まるで壊れ物を扱うかのように、優しく優しく撫でられる。

気持ちは良いが、最近は少し物足りなく感じる自分がいる。


「毎日毎日…飽きねぇのか?こんなことしてよ」

「何故?美しい者を美しいと褒め讃えることは、当然の事だとワシは思うぞ」

「いや…なぁ…そうじゃなくて…」

「??」


俺の真意に本気で気付いていないらしく、家康は首を傾げた。


…俺らは、同盟を結び程なくして付き合いだした。告白は家康の方からだ。
で、付き合い出したはいいものの、情を交わすことはおろか、今だkissすらしていない。

俺のこと大事にしてくれてんのは分かる。それも、ものすごーく。
ものすごく分かるけど、俺にだって性欲はあるわけで…
好きな奴に、こんな風に毎日触れられていれば、いい加減身体も火照ってしまうというもの。


「なぁ家康」

「どうした?政宗」

「こういうところも…触っていいんだぜ?」

「!?」


今だ慈しむように頬を撫で摩っていた家康の手を両手で軽く掴み、するすると身体のラインを辿らせる。
布の上から胸を触らせた。つっても、喜ばれるような柔らかい膨らみもないが。

だが、みるみるうちに家康の顔は茹蛸状態になり、いつもは凛々しい眉が「ハ」の字を描いた。
…この表情は可愛いかもしれない。


「ま、まさむね…?!何を…っ!?」

「だから、誘ってんだよ!これ以上を俺に言わせる気なのか?」


俺まで恥ずかしくなり、互いに真っ赤になっていると、そのままの体勢で、ふと家康が俯いた。


「もちろん、いつかは…と考えていた。しかしそれでは、お前と対等でなくなってしまう気がしたんだ…」

「Ah...」


徳川との同盟の際、俺が出した条件。それは、「徳川と伊達が対等でいること」。
同盟を結ぶのはいいが、属国として徳川に組するのだけは避けたかった。

だが、人の良い家康にそんな交換条件を飲ませるのもバカバカしい話だったと思う。
家康は、同盟相手である伊達軍を丁重に扱ってくれるし、対等な関係を保ってくれていた。
そもそも人の絆を大事にする家康が、権力で他国を蹂躙するとはとても思えないのだが。
しかし敢えてそうしたのは、奥州の民、そして自軍の家臣らを守る身として当然の義務だったからだ。

だが、それとこれとは話が違う。


「同盟も大事だが、その前にあんたは俺の恋人だろ?」

「ああ、そうだ。だが政宗…お前を抱く、ということは、おなごとして扱うも同然なのだぞ?
ワシは、そうすることでお前を深く傷付けるのではないかと、いつも不安なんだ」


本当に、こいつは。


「……情交ってのは、男が女を蹂躙するためのものじゃない。愛し合うためのひとつの手段だろ?」

「ああ、違いない」

「だから、俺はお前と…」


この鼓動は、きっと家康に伝わっている。
左胸に当てられている温かな手がそっと動き、それは背中に回された。

優しく、だけど力強く。

家康の人柄を象徴したようなその動作によって、俺は逞しい腕の中へと包まれていた。


「本当にいいのか?政宗。ワシは抑えが利かないかもしれないぞ」

「Come on. 家康なら大歓迎だぜ」

「全く…お前には敵わんなぁ」


初めて触れた唇は、掌とは対照的に柔らかかった。








----------

初々しい家政(笑)

家康くんの口調が迷子になってますけど、石を投げないでください…



お題提供→X、様

「思わせぶりなあの人」から抜粋。



2010.8.10


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!