「じゃ、なまえちゃんの席は沖田くんの隣」
『却下』
「ちょっとォォ!!意味分かんないんですけどォォオ!!!」
君に捧ぐ空
07:第一印象≠性格
(人間って怖い)
『アイツの隣だけは絶対に嫌。それと何で名前呼びになってるの』
「なんとなく?」
『………』
なんでこんな適当な人が教師になれたんだろう、なんて考え出したらキリがなさそうだ。
しかも、さっきのやりとり見てたくせに何でわざわざ沖田の隣の席にするかな……。
「ほら、早くしなせェ。たっぷり苛めてやるぜィ」
『…何でこのあたしが沖田の指図なんか受けないといけないの?』
「そうですかィ…。なら逃げられねーように縛ってやらァ」
『うんごめん今すぐ行くから止めて』
何でサディストには【恥】ってものがないんだろう。沖田の右手に掴まれる縄を見て大きくため息をつく。
(あー…最悪だ)
ぶつぶつと文句を言いながら、窓際で沖田の隣の席に足を進める。
「なまえちゃん」
『?えっと…?』
「志村妙よ。お妙でいいわ。よろしくね」
席につくと同時に、振り向いた前の席の子が簡単な自己紹介をしてくれた。
ポニーテールと黒髪の似合う、大和撫子風な女の子。手を口元に添えて笑う表情でも絵になるくらい美人さん。
『うん!よろしく、お妙ちゃん』
「ふふ、女の子がきてくれるなんてすごく嬉しいわ」
『そうなの?』
「このクラス、男の子の方が多いから」
お妙ちゃんの言葉に教室を見回すと、確かにセーラー服より学ランの方が目立つ。
……ていうか、空席他にもあるじゃん。
絶対嫌がらせだアイツ
「なまえちゃん?」
『なんか空席多いね』
「空席じゃなくて、ほとんどはサボリよ」
『サボリ?』
「高杉くんとか神威くんとかね。3年間、数えられるくらいしか学校に来てないもの」
ちょっと待って何それ
『ちょっと銀八!』
「オイ教師呼び捨てにすんじゃねェよ。銀ちゃんって呼びなさい」
『生徒会の報告書では、3Zはいつも全員出席になってたんだけどどういうこと!?』
「スルーは流石の銀さんも傷つくぞー」
……何で会話にならないかな。
諦めてさっきの話の続きを聞こうとしたら、お妙ちゃんが黒板(というか銀八)目掛けて何かを投げた。
…………コンパス?
「先生、きちんとなまえちゃんの話聞いてあげてくださいね」
にっこり。
お妙ちゃんは笑顔は崩さない。
自分の横で、黒板に深々と突き刺さったコンパスを見て銀八が固まっていた。
『お、お妙ちゃん?』
「ごめんなさいね。仕留めるつもりだったのに外しちゃったわ」
『…………』
チッ、と舌打ちまでしたお妙ちゃんに“大和撫子”なイメージが崩れ去っていく。
…ほんと、3Zって素晴らしいね。
「どうしやした?いつにも増して不細工な面しやがって」
『………』
「睨むのやめなせェ。泣かせたくなりやす」
頬杖をついて、こちらに顔を向ける沖田には、もう相手にする気すら失せてくる。
(梓ちゃんになんて言おうかなー…)
1時間目終了のチャイムを耳に聞きながら、苦笑いで携帯を開いた。
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