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消えた言の葉(銀+高)

*現代パロ
*死ネタ要素アリ




ほんの偶然だった。
たまたまパンをかじりながら窓の外を眺めて、たまたまそこに地面すれすれに飛ぶツバメがいて、たまたまアイツが目に入って。よぼよぼと老人のように歩く旧友に何を思うわけでもなく、反射的に迎えに行かないといけない、と脳が勝手に信号を送った。煩わしい。だが行かないといけない。

高杉は傀儡のように、彼が向かうであろう場所へと向かった。階段を降りた辺りで眼帯を付けるべきかと迷ったが、結局やめた。


ガラガラと戸を開けると、まず目に入ったのは薄汚い雲だった。逆に清々しい気分になってくる。高杉は小さく鼻で笑った。それから、最初から分かっていたように玄関の陰に視線を送り、最初から決まっていたように彼―銀時は壁に背を預け、どこか遠くを見ながら蹲っていた。


「先生が死んだ」

感情のない声で、銀時は呟いた。


―ポツリ。
ああ、雨が降り出してきた。二人は表情を変えることなく、それぞれの方向を向いていた。高杉は空を、銀時は地を。きっと雨は止まないだろうとお互いに思った。

いつの間にか、銀時はずぶ濡れになっていた。高杉は随分後にそれに気付き、そして自分が屋根の下にいたせいでほとんど濡れていないことに嗤った。だからといって、屋根の下に銀時を呼ぶ優しさも、自ら濡れる勇気も無い。

「そうか」と、高杉が答えたのは、激しく降り続いていた雨が小雨になった頃だった。


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