伝言ゲーム(高銀)
*20代高杉×10代銀時
*現代パロ
高杉が、あの高杉が、デスクに突っ伏していた。
高杉の腕の下には書きかけの書類が皺を寄せ、その隣で高そうな万年筆がインクを零して紙を黒く染めている。高杉は瞼を下ろし、ゆったりとした呼吸を繰り返していた。
ありえないと思った。
高杉は家に仕事を持ち込むことはあっても、投げ出したり、期限を破るようなことはなく、むしろ仕事を貰ったその日にはもう終わらせているような奴だった。(あくまでヅラから聞いた話だ)
デスクにあるのは一週間前に持ってきたもので、今日中に終わらせなければならない、と昨日の晩高杉が言っていた。昨日の今日だから、期限は過ぎてしまったのだ。あの高杉が。
心なしか目の下に隈があるように見える。あまり寝てなかったのは知ってる。それは高杉が馬鹿だから。そう決めつけて知らないふりをした。
俺は元々捨て子だった。それを松陽先生が拾ってくれて、松陽先生が死んだ後は高杉のもとで暮らすようになった。
何度か家出をしたが、その度に見つけられて、殴られて、連れ戻されたから、もう面倒臭くなって家出することをやめた。てっきりそういう趣味でも持ってるのか、それか売る気なのかとも思ったが、むしろ高杉は俺とあまり接触してこなかった。
転がった万年筆を元の位置に戻し、真っ黒になった紙を丸めて捨てる。ごみ箱は割とすっきりしていた。
「……銀…?」
掠れた声が聞こえ、顔を上げてみればやけにやつれた高杉がそこにいた。
高杉はむくりと起き上がって頭を掻き、俺と山のように積まれた紙束を見比べると、紙束を掴み取り、一枚ずつグチャグチャに丸めながらごみ箱に投げ捨てていった。
「いいの?」
「いい。もう知らねェ」
ごみ箱の中でどんどん紙が積み上げられていく。いつの間にか溢れそうなぐらいになっていた。
「随分溜めちまったなァ」
くくっと肩を竦めた。
それでも高杉は紙を詰め込んでいく。もう入らないだろ。やっぱ馬鹿だな、こいつ。
「銀時」
デスクの上の紙を全て捨て終えると、高杉は俺を呼んだ。椅子から立ち上がって首を回し、俺の前を通り過ぎる。ドアノブに手を掛け、少しこちらを見た。
「それ捨てとけ」
はにかんだ表情が見えたと思ったら、ドアの向こうへと行ってしまった。
冗談じゃねぇ。なんで俺がこんなことしなくちゃいけねぇんだ。
ごみ箱に八つ当たりしたら、紙屑が散らかった。
「………」
俺は零れないように紙屑を詰め込み、そのままにしておいた。
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