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猫の知る世界(村塾組)

*桂+高+子銀



――猫の唸る声がした。


愚者は時の理というものを見計ることが出来ないのだろうか。爪を立てることしか知らない猫に喉を鳴らせというのは無理な話だ。自由に放しておけばいいものを。

桂は重い溜息を吐き、筆を定位置に戻した。

「…全く、不躾なのはどちらだろうな」



◇◇◇



桂が燭台を片手にとある部屋へと向かうと、やはり高杉がいた。ギラギラと目を光らせ、今にも刀を抜かんばかりの勢いである。

「高杉」

その一言で、水をぶちまけたように鎮まった。
高杉は桂を見ると、肩をすくめた。

「ちょっと戯れ合ってただけじゃねェか」

拗ねた子供の如く。高杉の遊び癖にも困ったものである。
桂は高杉の後ろへと目を向けた。

毛を逆立てた猫が、牙を剥き出してこちらを睨んでいる。ただの猫なら引っ掻き傷で済むが、彼なら殺されかねない。刀の意味も知らぬあれに、誰が刀を持たせたのだろう。尋ねるまでもない。この世の中だ。

「銀時に何をした、高杉」
「別に何もしちゃいねェよ。知らぬうちに尻尾を踏んじまったかもしれねェがな」

高杉は鼻唄でも唄うかのように答えると、壁に背を預けた。


「銀時」

桂は腰を低く下ろし、猫に呼びかけた。
銀時は高杉を一瞥すると、刀を下ろした。己に刃を向けない者に、彼は牙を剥いたりしない。

「…ごめん、なさい」

二人はぎょっとした。桂は唇を噛み、高杉は目を逸らす。
それでも彼は紡ごうとする。
桂は彼の手を引き、腕の中に収めた。

「何も言うな。お前はもう眠れ」

猫は「ごめんなさい」ともう一度呟き、眠りに落ちた。



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