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最後のわがままです、
2
 

未だに胸から血液を流し続ける、己の膝を枕にし、眠る少年を見下ろし、男は思う。

胸から流れる血液を見て少年は気を失って倒れた。まあ、当然の反応だ。
ここは夢殿だが、必要ならば現実に帰ることはない。少年が戻ることなく、ここにいるのは、この傷を癒す必要があるからだろう。こんなに酷いのに、よく堪えていたと男は思う。子供の心は大人に比べ、酷く柔く脆い。いくら、もう青年と呼んでも間違いでない歳でも、まだまだ子供で、今から強かな心に変わるというのに。この少年の心の深くに穿たれた傷は、大人でも、自分でさえ、到底堪えられるものではない。
「そんなに、あの男は魅力的かい?」
返事が返って来ないことを承知で問い掛ける。この少年を苦しめる男は少年のことなど毛ほども思っていない。まだ、自分の方が思いやっている自信がある。
「…う、」
寝返りをうとうとしたが、痛みが走ったのか少年は身動ぎし、落ち着いた。時折瞼や睫毛が震えるが、起きる気配はない。
──夢殿で夢は見れるのだろうか?少年が目覚めなければ男にする事はないので、どうでもいい事をつらつらと考察する。夢で寝ると目覚めないと古くより伝わるが、そうであれば呼吸は止まるはずだ。少年の胸は規則正しく上下している。


「あぁ、憎い」


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