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最後のわがままです、
自覚
 


心の奥の痛みを忘れ、彼の人との逢瀬に思い馳せ。傷からどんなに目を背けても、癒えはしないのに。


“自覚”


「じゃあ、何であんたは現われたんだ」
ここはやはり、夢殿らしい。声も普通に発せているし、五感全てが鮮明に情報を伝えているので、寝ている実感がないのだが。
「さぁ、何故だと思う?」
「…はぁ?」
祖母もそうだったが、昔の人は一貫して言葉遊びが好きなんだろうか?歌を詠むのに言葉遊びは必要でないと思うが。しかし、この爽やかに、此方には少しばかり腹の立つ笑顔を浮かべた目の前に座る男がいる意味がわからない。
すると、答えがわからないとわかっていたのか、おもむろに立ち上がる。
「“それ”に目を向けてもらわなきゃならないからな」
と同時に俺の胸元を指差した。人を指差すな、と教わらなかったのか、腹が立つ。
「こら、逃げんな」
ガシ、ゴキ。頭を鷲掴みにし、強引に下に向ける。地味に痛い。
「……は、」
首は痛いがそんな事より、目に映る異様な光景に開いた口が塞がらない。胸から血液がどくどくと流れていた。意味がわからない。何で血が流れている?怪我なんていつした?


「お前の、心の傷だ」


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