catastrophe-悲劇的な結末-2
ーー何故、気づくことができなかったのか。
「グレン、お前の本当の目的はなんなんだ」
グレンを前にしてジャックは言った。近頃のグレンの行動は不可解過ぎた。ジャックもティナもグレンに対して言い知れぬ不安を感じるようになったのだ。だから問い詰めた。けれど、
「これ以上深入りするな、ジャック」
剣を向けられて漸く気付いた。
「お前とは、友のままでありたいのだ」
既にグレンの心が壊れてしまっていたことに。
「ティナは、どうする気なんだ」
瞬間、心配そうな表情をしていたティナが脳裏をよぎった。グレンの様子を気にかけていた彼の婚約者でもある彼女。彼女の思いはどうなるのか。
「ジャック」
剣を鞘に戻したグレンの表情は俯いていた為見えなかったが声はいつも通り淡々としていた。
「後は、お前に任せる」
「…!」
簡単にティナを切り捨てたグレンに怒りが込み上げてくる。いつだってグレンの傍らで彼を支えてきたティナ。そんな二人を見て来たからこそ許せなかった。そして何より、自分が愛している女性だったから。
「…ッ、グレン!」
「いつか、」
ジャックの言葉を遮ってグレンの静かな声が落ちる。ジャックは思わず言葉を止めた。グレンの声は先程と僅かに変化していたからだ。
「ティナに伝えてくれ」
ジャックとグレンとティナが三人でいたときにグレンが聴かせる、それ。
「お前はお前の想いを叶えろ、と」
穏やかな声。
自分で伝えろと言ったジャックにグレンは首を横に振った。そしてそれきり何も言わなかった。
それがまだ伝える時ではなく、それを伝える時には彼が伝えられる状態にないということに気付いたのは全てが終わった後だった。
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