catastrophe-悲劇的な結末-3
ーーもはや希望も絶望もありはしない。
剣に付いた最早何人分と分からない血を滴らせながらグレンは燃え上がった血に染まった廊下を歩く。もうこの屋敷に生きた人間は殆どいないだろう。しかし壊れた己の心では何も感じない。グレンはジャックがやってくるであろう場所へと歩き出す。
「…ーー」
ふと、幼なじみであり仮の婚約者の彼女を思った。
レイシーへの想いを捨てられないグレンとジャックへの想いを押し込めたティナ。ジャックとティナが思い合っているのは分かっていた。しかし、互いの家の都合上グレンの婚約者となったティナ。グレンに合わせられる女性がティナ以外にいなかったということもあったのだ。無理をしなくていいと言ったグレンにティナは笑った。
「グレンは彼女を想い続けて。彼女に出会えるまで、私を仮の婚約者として利用すればいいのよ」
「ならばお前の想いはどうなる」
ティナは目を細め笑った。それは彼女が時折見せる困ったような表情だった。
「…私はいつでもジャックに会えるもの。それだけで十分」
「……」
「想いを伝えるだけが、すべてではないでしょう?」
グレンはティナの後頭部に手を添え、自分の胸にその華奢な体を引き寄せた。
「…馬鹿だ、お前は」
燃え上がる炎が辺りを包み込んだ。そろそろジャックが来るころだろう。
「レイシー…」
想い続けた愛しい彼女の名を呼ぶ。
「グレン!!」
これから私はティナが想い続ける目の前のジャックに手をかける。
そして、
「…ジャック…グレン…?」
呆然と立ち竦む彼女自身も。
「私の為に、死んでくれ」
瞳に涙を溜めて血まみれのドレスを纏うティナを見ながら壊れてしまった心で願う。せめて、押し込めた彼女の想いが、叶うようにと。
無力を嘆いた銀色 悔やみ続けた金色 叶えと願った黒色
悲劇の物語が終わるとき
そこには誰一人…ーー
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