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羽根の素敵な贈り物 1



「ジャック、お祭りに行きましょう!」
「…は?」


自邸の庭で恒例のお茶会をしていたジャックは何時ものようにベザリウス家の塀を越えて突然冒頭の予想外な発言をした目の前のよく知る女性に思わず間の抜けた声を出した。




物 1




「成程。今日は聖ブリジットデイだったんだね」


祭風に装飾され普段より賑わっている街を見てジャックは納得したように呟く。そんなジャックの隣で此処まで彼を引っ張ってきた張本人であるティナは微笑んだ。


「そう。一度来てみたくて。実はグレンも誘ったのだけれど、ほら、彼はこういう人混み苦手でしょう?」
「ああ、確かに。グレンはあまり好まなそうだ」
「だからジャックを誘ったの。貴方なら大丈夫だと思って」
「おや。もし私が嫌だ、と言ったらどうするつもりだったんだい?」
「あら?ジャックは紳士だから女性のお誘いは絶対断らないってグレンが言っていたのだけれど」
「……グレン」


ジャックのティナに対する気持ちを知っているグレンだからこその言葉だとジャックは内心溜息を吐いた。ティナからの誘いをジャックが断る筈が無いのを見抜かれている。グレンに言った覚えもないのでジャックの様子を見てそれに気付いたのは流石としか言いようがない。
そんなことをジャックが考えているとティナが彼の手を握った。


「先ずは着替えましょう」
「着替え?」
「ええ、お祭り用の服があるらしいの。それを着た方が楽しめるでしょう?」
「そうだね。ああ、そこの店なんかどうかな?」


ジャックはそんな考えを振り払い、気を利かせてくれたグレンに感謝しつつティナと近くにあった服屋に入って行った。








「話には聞いていたけれど本当に素敵ね」


海色の柔らかな生地に白のレースがあしらわれたドレスに身を包んだティナは歩きながらキョロキョロと街や人々を忙しなく見物していた。


「ジャック、あのお店を見てみましょう。早く早く」
「落ち着いてティナ。お店は逃げないよ」


普段と違う空気に興奮気味のティナを笑いながらたしなめるジャックは白を基調として所々海色が入った服を着ている。ティナと逆の色合いである為、二人が並ぶと元の造形も相重なって周りの視線を集めている。当の本人達は全く気付いてはいなかったが。


「あら?」
「?どうしたんだい?」


店の前まで行くとティナは足を止めた。つられてジャックも止まる。何かを見つめているティナの視線の先を追ってみると一人の少女が泣きながら立っていた。道行く人が誰も声を掛けない状況で二人は顔を見合わせて少女に近付く。


「どうしたのですか?」
「……?」


声を掛けたティナを見上げた少女の瞳は涙が溜まっていた事で更に透き通るような青に見えた。にこりと笑ってジャックとティナは少女の目線にしゃがんだ。


「お困りなら私達に話してくれないかな、お嬢さん」
「お役に立てるかどうかは分かりませんけれど」



ここから始まるのは摩訶不思議な物語。






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